咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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【前世物語②】マリアンヌの罪(後編)
作者のsakuyaが前世療法を受けた時に見えたストーリー。
これは、ノンフィクションか? それともよくできた幻覚(ファンタジー)か?
怒涛の最終編です。


【前世物語②】 マリアンヌの罪(後編)


「へぇ~、やるわよね~。あんた、一体どういう手を使ったんだい?」
マリアンヌの母は高笑いをしながら、室内の調度品などを吟味していた。マリアンヌは母との再会を嬉しく思うよりも困惑気味だった。そして、もっかの関心事は母が連れて来た3人の子どもたちであった。子どもたちはいずれもみすぼらしい身なりをしていた。一番上と二番目の子は10代後半くらいであったが、一番下の子は未だ幼児であった。
「私らはろくに食べることもできず、瀕死寸前なんだよ。娘なら何とかすべきでないのかい」

母はお金を無心に来たのだと、マリアンヌもすぐに察した。マリアンヌは母を見下すようにして数枚の金貨を渡した。マリアンヌは一番下の子に微笑みかけ触れようとすると
「何するんだい! その子は渡さないよ!」
母は人身売買と勘違いしたようであった。
「あんた、お世継ぎは出来たのかい?ハハハ~、金持ちも大変だね~! 出来ないから、この子がほしいんだろう。でもこの子は絶対に手放さないよ。だって、あたしの子の中で一番可愛いからさぁ~ふふん」
マリアンヌは母のこの言葉にカチンと来た。そして、母に捨てられた過去などが走馬灯のように蘇ってきたのだ。
「何故、このようないいかげんな女に神はポコポコと子を授けるのさ!」
マリアンヌは悔しさで泣きそうになりながら心の中で吐き捨てた。そして、母には定期的に送金をするからと約束をして、母たちを追い出した。


母の訪問以来、今まではぼんやりとしか考えていなかったお世継ぎ問題が現実味を帯びて浮上し、マリアンヌは心を掻き乱される苦しい日々を過ごしていた。そして、その問題をなるべく忘れようとするために領主の仕事を積極的に手伝った。自分たちの領土の生産率を上げ領民の生活を向上させるため、夫婦で一丸となって仕事に奔走していた。だが、仕事に疲れると、つい母の言葉を思い出してしまうのだ。
「金持ちはいいよね~! あ~あ、私も金持ちの男を捕まえて贅沢してみたいよなぁ~」

「金持ちには金持ちの苦労があること! 分かろうともしないで! 私たちが忙しく働いてる間にも、あの女は私のお金で男と遊びほうけているに違いないわ~!」
マリアンヌは沸々と沸き起こる気持ちを静めようとして、“心を静めるハーブティー”をつくってもらい一気に飲み干した。

貴族の夫人たちで定期的に開かれるサロンも、次々と新しい形が取り入れられるようになった。最初は女たちばかりの密談という形式であったのが、しだいに音楽家や舞台作家などの芸術家の男性を多数招くようになり、色めき立ったものになっていった。近年流行していたものに“マスカレード(仮面舞踏会)”というものがあった。マスカレードは仮面を着けて座談会や舞踏会を行うというもので、普段なかなか本音を話せない貴族たちの間であっという間に浸透していった。

社交術が苦手だったマリアンヌも、仮面を着けると不思議と会話が出来るようになり、その楽しさを覚えて頻繁に足を運ぶようになった。そして、男と女のウィットな会話も楽しめるようになっていった。しかし、どんなに口説かれても肉体関係に持っていくことは避けようとしていた。
「会話の上でラブアフェアを楽しむだけ」
“不倫はスマートにせよ”という貴族の掟を頑なに守ろうとした。かって修道女だったマリアンヌには“罪悪感”という概念が強く、それが暴走を防ぐ手立てになっていたのだ。


日々が過ぎてゆき、マリアンヌは30代の半ばにさしかかろうとしていた。領主の提案で、お世継ぎは養子をたてようと動き始めていた。マリアンヌもその提案を受け入れつつ、しかし、どこか諦めきれない想いをも抱いていた。何故なら、自分の母がこの位の年齢でも子どもを産んでいたからだ。
「ひょっとしたら・・まだ・・いけるのかもしれない・・」
マリアンヌは年齢的に最後のチャンスだと思っていた。できれば自分で産んで、領主らを喜ばせたいと思っていた。

「そろそろ母に送金する時期だわ・・」
マリアンヌはとうとういてもたってもいられなくなった。領主はしばらく留守である。マリアンヌはいつもよりも念入りに着飾って馬車を走らせ、マスカレードの会場へ向かった。そして、マリアンヌはかねてから口説かれていた男性の想いを受け入れるむねを伝えた。男性は驚いていたが、お互い仮面を着けたまま別室へ消えていった。

「母だって、いつも男にだらしなく、父親が誰かも分からないような子を次々と産んでるわ。・・だから、普段真面目に生きている私が少々なことをしたって・・罰は当たらないハズよ」
マリアンヌは心の中で煮えたぎっていた。その想いが大胆な行動へと走らせてしまったのだ。


数日後、マリアンヌは領主に刺されて死んでしまった。

マリアンヌは、魂が肉体からスーッと抜け出すのを確認し自分の亡骸を天上から眺め、死んだことをすぐに覚った。

「ごめんなさい。悪いのは全て私です」

領主は、マリアンヌの亡骸にすがりつき大声を上げて泣き叫んでいた。領主はついカッとなってやってしまったことに、いつまでも後悔していた。



<母の想い>

送金とともに娘の訃報も知らされることになったマリアンヌの母は、裏通りの酒場で一人酒に浸っていた。
「本当にあの子は・・、昔っから要領の悪い子だったよ。何で・・もっと上手くやれなかったのさ! 本当にツメが甘いんだから!」
「娘の金で飲んでおきながらよく言うよ! 今日という今日こそは、ツケを全部返してもらうからねっ!」
酒場の店主の老婆は眉間に皺を寄せながら、厳しい口調でマリアンヌの母をなじった。母は遠い目をしながら、回想を始めた。

-----------

マリアンヌよ、子どももつくらずに結婚ができて夫婦関係も保てるなんて!いったいどうしたらそんなことが可能なのだい。・・愛されていたんだね。すごいね。そんなこと、母には真似できないことだよ。母はいつも愛される為に必死だったよ!なのに、男はいつも逃げてゆく。永遠の愛を得るには、むしろ子どもなんて・・つくらないほうがいいのだろうか?

けど、マリアンヌ、あんたが出来たときの悦び、あれは本当に幸福だったんだよ。あんたの父もたいそう喜んでくれたよ。お腹に宿ってからは、あの人(父)もこれまでになく優しく接してくれたし、何より“愛”を実感することができたのさ! ホラ、愛ってカタチの無いものだろ。その愛をダイレクトに体感できるのが妊娠だと思っていたし、愛の結実だとも思っていたのさ。しかし、それは単なる錯覚なのかい・・・?

修道院へ入れたこと、さぞかし怨んでいただろうね。たしかに、母としては酷い仕打ちだよ。しかし、幸福になりたかった。いつまでもこんな貧しい生活をマリアンヌにもさせていたくはなかったし、できれば皆が幸福になれるのが望ましいと考えた。今度こそちゃんと結婚をして、この悲惨な生活から脱さなければ・・と母も必死だった。

愚かな話だと思うが分かっておくれ。マリアンヌはちゃんとした身なりをすればかなり器量のいい子なのだよ。日増しに美しく成長してゆく。だからこそ怖かった。新しい父がマリアンヌに手をかけてしまわないか・・考えただけで身震いがしたのさ。マリアンヌだけは、母と同じ人生を歩んでほしくはなかったのだよ!早い時期から男を知り、男から男へ渡り歩くような人生にはさせたくない。それは幸福から遠のくことだから。母とは正反対の折り目正しく清らかな女性として生きてほしかったから、修道院へ入れたのだよ。孤児院へは入れたくなかった。あそこは人身売買が横行してるから、マリアンヌのような子はすぐに標的にされちまうだろう。

分かってくれるか? ・・分かってはくれないだろうなぁ。これでも精一杯の母の愛のつもりなのだよ。あの子を魔の手から守ってやりたかった。男にいいように汚されるだけの悲惨な人生にだけはさせたくなかった。

修道院の生活は辛かったであろう。しかし、その生活のお陰で貴族と結婚することができたのではないのかい? でも、修道院が辛かったら、いつ逃げ出してもいいと母は思っていた。やっぱり逃げ出したようだけど、それでこそわが娘だよ! あんな所、いつまでも居る所じゃないよ。生きるためには、利用できるものは利用しなくっちゃ!

久しぶりにマリアンヌに会えたときは嬉しかったよ。綺麗だったなぁ。ルビー色のドレスが似合っていて、気高くてわが娘ながら眩しかったよ! けど、あんたは迷惑そうだったね。まあそりゃそうだろう。娘に頼らなきゃならないことほど情けないことはなかったけど、子どもも抱えてるし色々と言ってられない。会える口実ができると思って喜んだよ。まさか定期的に送金してくれるようになるとは思ってもみなかったよ。そんなことは、さすがに頼めないと思ったからさ。やっぱりなんやかんや言って母のことを想ってくれていたんだね。優しい子だよ。しかしその優しさが仇になるなんてねぇ・・

しかし、不思議なもんで、金持ちほど子どもってのは出来にくいものなんだねぇ。いいもん食ってただろうに。母なんか食うものも満足に食えないのに、次々出来ちまうよ。今思えば、一番下の子をマリアンヌにあげとけばよかったよ。マリアンヌのことを好いていたし、この子もそのほうが幸せだったかもしれないし。・・なにより・・マリアンヌが死んじまうようなことには・・ならなかったかも・・しれないのに・・

ああ~、これから・・どうやって生きていけばいいんだよ・・・



そう言って、マリアンヌの母は泣き崩れていた。
「アンタは、どうしていつも人から幸せにしてもらおう・・って考えるのさ! 男からも、子どもたちからさえも!」
酒場の隣のカウンターで飲んでる男がそう声をかけてきた。
「あたしの話聴いていたのかい!」
「ワシは、アンタを幸せには出来んぞ! ただし、いい話だったからここはワシが奢る」
男はマリアンヌの母の肩に手をまわした。母は女の顔になって男の肩にもたれ掛かった。

<END>

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

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