咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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【前世物語②】マリアンヌの罪(中編)
作者のsakuyaが前世療法を受けた時に見えたストーリー。
これは、ノンフィクションか? それともよくできた幻覚(ファンタジー)か?


【前世物語②】 マリアンヌの罪(中編)


夜も白々と明ける頃、マリアンヌは一人セーヌ川のほとりをとぼとぼと歩いていた。
「取り返しのつかないことをしてしまった! でも、もう後には引けないわ」
修道服ではなく、粗末な継ぎ接ぎだらけの木綿のワンピースを身に纏い、何処から見ても“町娘”といったいでたちであった。マリアンヌは修道院を脱走したのだった。

その後、マリアンヌは路上で声をかけてきた中年男と一緒に暮らした。男の名をジョーと言った。マリアンヌはジョーに抱かれ“女”になった。
「一度でいいから恋がしたい! 性行為というものをしてみたいと思っていた。一生涯恋のない人生なんて嫌だ!なんて思ってしまったわ。ああ~、嫌だ。わたしにはやはり母と同じ血が流れているんだわ」
ジョーはマリアンヌの生い立ちを聞いて驚いていた。
「何て酷い母親なんだ! 自分は好き勝手に散々“女の悦び”を謳歌しておきながら、娘にはこんな辛い想いをさせて! 逃げてきて正解だよ。ああ~、アンタ、こんなに細い体・・可哀相に。修道院ではロクに食べさせてもらっていなかったんだね」
そう言ってジョーはスープをこしらえに行った。ジョーは料理が得意で面倒見の良い男だった。
「あんなに憧れていた性行為だったけど、やってみたら思ったほどでもなくて“こんなもの?”って思ってしまったわ」
マリアンヌは、生きてゆく為にジョーに恩を感じ慕っていたが、恋愛とは違うものだろうと思っていた。


それから数年が経ちマリアンヌは領主の妻になっていた。

領主と恋に落ちたが、マリアンヌは自身の身の丈をわきまえていたし“愛人”の立場で結構だと思っていた。だが、領主の強い希望で“正妻”として迎えられたのだ。

正妻になれた理由として、小さい頃から修道院で過ごしてきたお陰で、読み書きはもちろん、礼儀作法、聖典の知識、忍耐強さを身につけていたからだろうと自己分析していた。
「私は貴族の女は自己主張が強く傲慢で好きになれない。マリアンヌのような控えめで素直で純粋な女が好きだ」
領主はそう言い、本来なら貴族の娘と政略結婚する予定を突っぱねてまでマリアンヌを選んだのだ。領主の母親も最初は結婚に反対したが、マリアンヌの人柄に好感を持ち序々に認めていったのだった。

マリアンヌは懸命に貴族社会に慣れようと努めていた。連日のようにパーティが続いたが、マリアンヌはパーティが苦手だった。慣れない世界で緊張して楽しめる余裕など全くなかったのだ。パーティよりも一人で本を読む方が好きだった。しかし、そんなマリアンヌの気持ちをよそに、領主は何処に行くのもマリアンヌを連れ立って行った。マリアンヌは、磨かれてドレスの似合う美しい女性に成長していた。それが領主にとっても自慢だったのだ。マリアンヌの控えめな性格は、意外や貴族たちからの評判が良かったのだ。

領主と共にパーティ会場へ出かける途中、マリアンヌは馬車の中から見えた景色に突然の息苦しさを覚えた。それは、自分が10歳から20歳で脱走するまで生活していた大聖堂が目の前にそびえ立っていたからだ。修道女たちの姿が目に入って来ると、強い罪悪感にさいなまされた。修道女たちは一生涯、ドレスにも美味しいご馳走にも愛し愛される歓びにも縁がないのだ。そう思うとマリアンヌは申し訳ない気持ちになった。特に、女として愛される歓びを知らずに生きるなんて
「なんて可哀相!!」
だと思っていたのだ。

修道院に居た頃、修道院の生活に不平不満を愚痴る人も少なくなかった。
「不満ばかり言うくせに何も行動を起こそうとしないじゃない」
かってマリアンヌはそんな人たちにイラ立ちを覚えていた。嫌になったから脱走したという明確な理由で行動を起こしたマリアンヌは、自分で人生を切り開いたという自負があった。
「自分は間違っていない」
そう言い聞かせていた。神様からの天罰が下るだろうという罪悪感な思いより、修道女たちの鬱積とした“呪い”の方が怖いと震えてしまうのだ。

マリアンヌは気を取り直してパーティを楽しもうと思ったが、相変わらず社交術が不得手で心底楽しめないでいた。常に食事やダンスなどの作法が間違っていないか気を使うばかりだった。上っ面なことばかりを言う会話も苦手だった。
「今は、修道院よりは自由な世界に生きてるのかもしれないけど、貴族社会も窮屈で修道院とたいして変わらないかもしれないわ」
マリアンヌは声にならない声を発していた。
「貧乏上がりのクセに!」
貴族たちの中から中傷を浴びせられることも多々あったが、マリアンヌはそのことに対してはあまり気にならなかった。その通りだと思っていたし、それに数は少ないが“仲間”の存在があったからだ。

この時代フランスは確かに貧富の差は激しいが、一方で庶民の娘から貴族社会へ見初められて“成り上がる者”も少なくなかった。貧しい生まれだが、美貌と手腕のみで国をも動かす位の権力を振るう女傑さえも存在していた。マリアンヌと同じ境遇の夫人同士で集まってサロンを開いては、情報交換をしたりストレスを発散させていたりしていた。

サロンに集う夫人の中には、第2夫人、第3夫人などの“愛人”の立場にある人たちも少なくなかった。だが、このサロンでは正妻も愛人も関係なく分かち合っていた。何故そんなことが出来るのか? 貴族社会においては、正妻の立場にいる人は“夫に愛人が出来た位でガタガタ騒ぐのは往生際が悪い”と教育されていたからだ。正妻には正妻のプライドが有り“愛人?別にどうってことないわよ”という態度を示すことが多かったのだ。だが、正妻だろうと愛人だろうと心に潜む辛さは同じであり、そこの部分は女性同士分かち合えることが可能だった。もしかしたら、貧しい境遇の出身同士だからこそかもしれないが、実際には正妻対愛人の激しい対決が見られることもあった。

「お世継ぎ問題がね、重くのしかかっているわ・・」
最近のサロンでの話題である。マリアンヌとて例外ではなかった。嫁いで数年になるが一向に懐妊の気配がなかった。しかし、意外と疎外感なく過ごせていたのだ。何故なら、貴族の夫人には子どもに恵まれない人が何故か多かったからだ。ようするに“仲間”が多かったのだ。だが、正妻に子どもが出来なければ愛人につくってもらうというのも貴族での掟だった。

マリアンヌは思い切って領主に言ってみた。
「嫁いでかなり時間も経つけど、一向にお世継ぎに恵まれません。そのことがとても心苦しいのです。どうか、愛人をつくってお世継ぎをもうけてください。お願いします」
すると、領主はやや怒ったような口調で言った。
「何を言ってるんだマリアンヌ! 私は愛人など持たぬぞ!!」
「な・・なぜ・・です?」
「私はマリアンヌを愛しているのだ! ただそれだけだ!!」
領主は荒々しい物音を立てながら部屋を出て行った。領主の言ったことは本当で、それから後も愛人を持つことは一切しなかった。

ある日、サロンの常連だった夫人が全く顔を見せないようになった。噂によるとその夫人は懐妊をしたらしいのだ。だが、嫌な噂が蔓延していた。
「あの人、ずっーとできなかったのにさ、あの年で突然だよ! なんかオカシイわよ」
「夫の子じゃないらしいわ。あ、ここだけの話よ」
「あの人も、“その手”を使ったのね」
“その手”とは、近年の王家又は貴族社会で密かに流行ってることで、夫人が夫以外の男から“種”を貰い、懐妊を試みるという方法だ。王家もその方法をつかって危機を脱したと噂になっていた。不妊治療など無かった時代、積極的にお世継ぎをつくる方法は、まず妊娠しやすいと言われるハーブなどを服用することだった。それでもダメなら、夫の愛人に産ませるというのが一般的だった。だが、全ての貴族の男性が“やり手”というわけでは無かった。中には女性に消極的な“甲斐性なし”の夫もおり、よく言えば“優男”なのだが、このままでは子孫を残せないと危機感を持った夫人たちが、こぞって思い切った行動に出たりしたのだ。

マリアンヌを始め、他の夫人たちも興味本位に聞き入っていたが
「そんな、そら恐ろしいこと、絶対に無理だわ!」
そんな風に一致していた。

パーティなどではマリアンヌも他の男性から口説かれることが多々あった。貴族社会では“不倫はスマートにせよ”との掟もあった。もちろん表向きは不倫などご法度なのだが、隠れていそしむ人たちもかなり存在していた。マリアンヌはラブアフェアが不得手なため、口説かれてもいつもやんわりと断り続けていた。


月日が流れ、突然の訪問客にマリアンヌは驚愕していた。

10歳で生き別れになった母と、母の子どもと見られる3人の子どもが目の前に立っていたからだ。

<中篇終わり、後編へ続く>

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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