咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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【1話完結型シリーズ小説】婚外片思い 『ダンナの友だち』
しあわせな家庭の奥さんと言われています。

でも、こう見えても、人知れず恋してます。
そして、勝手に苦しんでいます。


婚外片思い 『ダンナの友だち』
※このストーリーはフィクションです


こう見えても、けっこう恋愛体質なのだ。

誰からも信じてもらえないけど、わたしはそう思っている。そういう体質でなかったら、こんなに苦しむことはないのに。

わたしは今、死にたいと思っている。

えっ、たかだか失恋くらいで死ぬなんて・・って、笑わないでね。これは経験した人なら分かることかもしれない。実際には死ななくとも、死んでしまいたいような気持ちになってしまうのだ。だって、恋は命掛けだもの。それが絶たれるということは、生命線が切れる程の辛さを味わうことなのだ。

わたしは、このような叫びにも似た気持ちを年下の友人の真奈に携帯メールで訴えた。「死にたい」と送信すると、真奈は困った風だった。そして、一生懸命にわたしをなだめる。どこか泣きそうな風でもあった。真奈は恋を知らない。恋人いない歴27年と言ったことがあった。だからこそ、わたしは真奈に打ち明けたのかもしれない。真奈はウブなので、わたしを見下すようなことはしないし、一生懸命にわたしを慰めようとしているところが可愛くも思えた。

「佑子さん、死ぬなんてことはしないで・・、お願いだから・・。その、ダンナさんの友だちは、佑子さんのことを嫌ってるわけじゃないんだから!」

ふふふ・・。真奈ったら、モットモらしことを言っちゃって。そう、ダンナの友だちの憲太が、わたしのことを嫌ってないことぐらいは知ってるのよ。ただ・・「友だちのままでいい」とあからさまに言われたことがショックなのであって・・・


わたしこと「佑子」は、37歳、二十歳の時に結婚したから結婚17年目になる。高校生になる息子が一人居る。わたしはダンナからひと目惚れされて付き合って結婚した。結婚の翌年には息子にも恵まれ、「初恋の人と結婚できるなんて幸せなことよ」と、人も羨むように思われていた。ダンナはわたしよりもひと回り年上で、安定した職業に就いているし、優しいし、確かに恵まれた生活とも言える。

しかし、結婚してしまったら、恋はしてはいけないのでしょうか?

わたしのように早く結婚してしまった人が、恋の虫がおさまるとは言い難いと思う。周りの人は、何度も恋して付き合って、今度こそ結婚!・・って思われても、なかなか上手くいかなかったりする。わたしも、恋を味わっていたいのなら早く結婚すべきではなかったと思った。

結婚してから、最初に恋を覚えたのは25歳のとき。
わたしは生まれつきの持病があって、病院に通っていたのだが、この年の時に主治医が変わったのだ。その主治医はわたしより5歳年上でダンナよりも若い。わたしったら、苦しいような胸の高鳴りを感じてしまって、その症状を訴えた。

主治医は笑っていたが、わたしは真面目に恋に落ちてしまったのだ。ダンナに悟れらないように嬉々として病院に通っていた。しかし、主治医は恋とか男と女とかの意識を避けようとしていた。友人のように親しく接してくれたけど、やはり医者と患者ででしかなかったのだ。しかし、どの患者よりも一番わたしに親しくしてくれたとの自負があった。自意識過剰だったのかもしれない。わたしが一人で勝手に盛り上がったことが、後で恥ずかしくなった。

主治医がわたしの想いを受け入れてくれなかったことで(当然だけど・・)、わたしは持病がさらに悪化してしまった。ダンナは心配して「あの医者はヤブ医者だ!」と怒り、もっといい病院を調べてくれた。そして、その病院のクスリがよく効いたようで、わたしはだいぶ平常心を取り戻していった。


その後もパート先が変わる度に胸が高鳴る男性が現れては、一人盛り上がって立ち消えになっていた。・・というより、主治医の件以来、わたしは恋に臆病になってしまって、自分から自分の気持ちを訴えるようなことはしなくなったのだ。片想いで十分。一時だけ幸せな気持ちに浸れたらそれで十分。そう、自分に言い聞かせてきた。


ある日、ダンナが職場の同僚を家に連れてきた。同僚は憲太と言い、プライベートでも家族ぐるみで親交するようになっていた。憲太はダンナよりも8歳年下の独身で、わたしと同世代で話が合いやすかった。憲太はわたしの好きなタレントにどことなく似ていた。そのこともあって、しだいに憲太に惹かれていくようになった。

しかし、どこに行くのもダンナと、あるいは息子と一緒で、グループ単位でいつも行動していた。内心、ダンナが何処かへ消えてくれればいいのに・・とさえ思っていた。ダンナがトイレなどで席を外したときは、チャンスとばかり憲太に近づいていた。憲太もそれを嫌がらない風だったので、自分に気があるのでは・・とも思っていた。

わたしは思い切って、お酒の勢いも手伝って憲太に、今度二人っきりで逢いたいと訴えた。

しかし、憲太は・・・それを拒んだ。理由は「あなたのダンナさんに申し訳ないから・・」だった。


それから、それ以来、憲太に会うことを避けている。ダンナからは不思議がられているが、体調が良くないから・・との理由で拒むようにしていた。わたしはウツ状態になり、食欲も無くなり、家から一歩も出ない日も多くなった。「死んでしまいたい」とも思うようになった。

そして、いたたまれず真奈に訴えたのだ。

「そのダンナさんの友だち(憲太のこと)って、マットウじゃない!!」

真奈はそう言ったが、ハイ! 全くその通りだ。わかっているのだ。憲太は、人妻に誘われて手を出すようなオトコでは無かった。とても誠実でマットウである。そのマットウさが憎たらしい。愛があるからこそ覚える憎たらしさなのだ。そして、真奈もマットウなことを言う。無理もない。恋をしたことがないからだ。だからこそ、真奈を選んで話したのだ。変に恋愛経験豊富な人からの説教じみたことは、今は聞きたくはなかった。

「佑子さん、とにかく、ご飯だけは食べてね。そして、死ぬなんて言わないで・・マジで皆が心配するからさあ・・」

最後に真奈はそう言って、携帯でのやりとりを終えた。心配してくれるのは心から有難いことだと思った。でも、実際には死んだりはしないだろう。いや・・死ねない。息子を残しては死ねまい! 恋モードから急に生活モード、いや、母モードになって冷静になった。純粋な真奈は、今頃真に捉えて混乱してるかもしれない。そう思うと、真奈に申し訳ない気持ちになった。しかし、人に訴えることで、わだかまりが消えてスッとする部分はあるのだ。自分はいつも人に助けられてるなぁ・・と思った。

やだ・・これ、わたしの・・顔・・?

ふと、鏡に映った自分の顔を見て思ったのだ。そこには、ノーメイクで肌もカサカサで髪も乱れた“おばさん”が映っていた。認めたくないけど、認めざるを得ない。紛れもない自分。わたしはいつまでも若いつもりでいた。童顔と言われていたので、年を取っている自覚が無かったのだ。気持ちはいつも、二十歳前、ダンナから一方的に見初められた時のままの状態だった。

そういえば、お化粧ってずっとまともにしていなかった。オシャレも。憲太と居るときもいつも普段通りのままだった。それでいいつもりだった。

このままでは、いけないかも・・

もし、わたしがもっと綺麗な人妻だったら、憲太の態度も違っていたかも? 等身大の自分を受け入れることは結構辛いことだ。今まで、それを見ないようにしてきたのだ。勝手に片恋をすることで、現実逃避をしていたのかもしれない。

真奈は恋はしたことがないけど、いつも化粧品とか洋服とかに興味を持っていた。それが、本当は女性としてしかるべきの姿であろう。わたしは、久々にファンデーションを取り出して顔に塗ってみた。シミとかクスミとかがカバーできるし、37歳の自分、まだまだイケるのではないかと思った。そして涙が溢れ、化粧どころでなくなった。

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

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