咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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【前世物語①】モロッコの悲愛 ~一夫多妻から純愛へ~
作者のsakuyaが前世療法を受けた時に見えたストーリー。
これは、ノンフィクションか? それともよくできた幻覚(ファンタジー)か?


【前世物語①】モロッコの悲愛 ~一夫多妻から純愛へ~


果てしなく続く砂漠の中に忽然と現れる集落。今から数百年前のモロッコのとある街に、砂ぼこりが風に舞う度、咳き込む男が居た。それは、おそらくその男の持病であろうか。男の名前はマサラと言った。中肉中背で、黒髪、浅黒い肌、アラブ系の人らしく彫りの深い顔立ちの中年男だった。ベールのようなものを頭から被り、革の靴を履いていた。

場面が切り替わった。
喧騒の街。入り組んだ迷路のような路地。気が遠くなるようなモザイクタイルの道と建物。同じ道を何度も行ったり着たり。嗚呼~、人生そのものが迷路なのかもしれない。

その路地の突き当たりにマサラの家があった。
パティオ(中庭)のある家に住んでおり、裕福層の証だった。部屋には、ピンクや赤や様々な文様の鮮やかな布が飾られていた。特に、様々な色のシースルーの絹の布が何層にも重なる様はたいへん美しく、この世のものとは思えない幻想的な世界をかもし出していた。

マサラは布を扱う商売をしていた。
現代でいうアパレル産業であろうか。商売はうまくいっていた。

マサラが最も栄華を誇ったと思えた時代の風景。
縦長の大テーブルで、大人数の家族が楽しそうに食事をする。沢山の子どもたちの笑い声が絶えない・・

大人数の家族? 沢山の子どもたち?
・・そう。マサラの家庭は一夫多妻の形態をとっており、妻は数人居た。そして、その妻たちに産ませた子どもたちが大勢居たのだ。

この国のこの時代、一夫多妻はめずらしいことではなかった。
何故、マサラは一夫多妻の形態を選んだのか? 女好きだったからか? いいえ、マサラの答えは“人助け”だった。この考えは、おそらく女性たちから理解されないだろうと思うが・・

この時代は貧富の差が激しく、マサラは、救済の意味で貧しい家の女性たちを積極的に輿入れさせたのだ。マサラは妻たちを平等に扱うために、正妻と愛人との区別をつけなかった。女性たちは、全員“妻”の身分だった。
第1夫人、第2夫人・・との呼称はあったが、単に輿入れの順番であった。

夫婦関係はどうだったのだろうか? 
妻たちには、いつもきらびやかな衣裳を身につけさせていた。だが、マサラが言うには、「愛は無かった」。ただ、“情”のようなものはかろうじて存在していた。では、マサラにとっての家族間の幸福は?と言うと、それは“子ども”の存在だった。全員の妻に、マサラとの子どもが存在していた。子どもは全員、無条件に可愛がっていた。そしてマサラは、「女は、子どもを産み育てることが最も幸せなことだ!」と信じて疑わなかった。


それから数年経って、人生の大転機が訪れた。

マサラの商売が破綻したのだ。マサラが40代の半ば位の時だった。
マサラは破綻の原因は自分にあると、激しく自分を責めていた。マサラは、数人の仕事仲間から激しく責められ、全ての責任を自分が取る形になった。

家庭の方も破綻した。マサラは妻たちに財産を平等に分け与え、実家へ帰した。
一家離散ということになってしまったのだ。この時、妻の中には怒り狂う者も居た。そして、妻の中で誰一人としてマサラの傍には残らなかった。「やはり“金品”で繋がった関係だったのか・・」と、マサラは寂しく想うも、何も言える立場ではなかった。ただ、子どもたちに対しては、「申し訳ない・・申し訳ない・・」との気持ちで一杯であった。

マサラは無一文になり、おまけに持病の“咳き込む病気”が悪化し病に伏せてしまった。人生最大の不幸の中、孤立無援だと思われていた。

だが、何と、マサラの病床の傍でかいがいしく看病している若い美しい女性が居たのだ。マサラが破産してから出会った女性だった。マサラと女性は親子ほどの年齢差があったが、“恋愛関係”であった。

皮肉にも、マサラは無一文になってから“本当の愛”を知ったのだ。

「世の中に、こんなにも優しい女性が居るなんて・・」
マサラは女性のことを女神のように崇めていた。そして、女性も方もマサラに惜しみなく愛を与え続けた。まさに相思相愛だった。貧しいながらも、幸せを感じて暮らしていた。

しかし、どんなに愛し合おうとも、二人は肉体的に結ばれることは無かった。何故なら、マサラの病状はかなり酷く、それどころではなかったからだ。それが、マサラに辛い気持ちにさせた。女性は、「気にしないで」と、優しく微笑んでくれたが、逆にマサラは男として情けない気持ちになった。愛は素晴らしいが、愛してるがゆえに辛くなるという気持ちも知った。

月日が経ち、マサラは、いつまでも温もりにつかっていてはいけないと思い始めた。女性は、そろそろ結婚を考える年齢だ。マサラは女性の将来の幸せを考えたら、「いつまでも、こんなショボクレたオヤジと一緒にいてはいけない・・」と、思い始めたのだった。

マサラは女性に別れ話を持ちかけた。
しかし、女性は激しく拒んだ。「あなたとずっと一緒にいたい」と言った。マサラは、女性の中の激しさと頑固な一面を知って驚いたが、それは嬉しくも感じた。しかし、マサラのかっての価値観である“女性は結婚して子どもを産んで育てるのが一番幸福だ”との想いがよぎり、今のマサラでは、「それは叶えてあげることが出来ない」ため、女性を幸せにしてあげることは出来ないと思ったのだ。マサラは女性によって、どん底から救われた分、女性を幸せにしなければ!との想いが人一倍強かった。

マサラは何日も何日もかけて、ゆっくり女性を説得していた。
「あなたは若い。これから幸せにならないといけない。あなたは、誰かと結婚して子どもをもうけて幸せに暮らしてください。今は辛くとも、長い年月が経ったら、やはりこうして良かったのだと分かる日が来るでしょう」
そして、女性の方もマサラの気持ちを少しずつ理解していくようになった。

そして、ついに別れる日が来た。
マサラは、身がえぐられるように辛かった。
本心は別れたくなどなかったのだ! 
ずーっと女性を傍においておきたかった!
別れた後、マサラは泣き崩れていた。


数年後、マサラは信仰に拠り所を求めていた。
マサラは、人の為にひたすら祈る人生をおくった。
かって愛した女性の幸せを・・
離散した妻たちと子どもたちの幸せを・・

その後は生涯独り身で、祈りながら生涯を閉じた。
亡くなった先は、宗教施設の礼拝堂の中で、誰からも看取られずに“孤独死”だった。しかし、マサラは想っていた。
「わたしは神に看取られて死んでゆく」
礼拝堂の美しい天井画を眺めながら
「この美しい世界へと旅立つのだな」
と、幸福感に満ちて永遠の眠りについたのだ。

<終わり>

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

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