咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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【1話完結型シリーズ小説】婚外片想い 「正反対のひと」
悲しいけど、人は・・
明るいほうへ・・楽しいほうへ・・
傾く いきものだ。


婚外片想い 「正反対のひと」
このストーリーは『遺書 ~ラスト ラブレター~』とリンクしています。
こちらから読んで頂くとより深いです。
※このストーリーはフィクションです



「人を好きになることが、こんなに悲しいなんて・・初めて知った・・」
苦しい胸の内、未央はそう思っていた。未央の夫の秀二は鬱病のため、休職中であった。秀二は鬱病ゆえに、ネガティブな暴言を吐くことも少なくなかった。未央は、そんな秀二にどう対応してよいか、悩むことが多々あった。しかし、秀二の家族や周りの人たちから
「未央さんほど、献身的な奥さんは居ない」
と評価されていた。しかし、未央は、周囲からそう思われれば思われるほど、本当の自分とのギャップで辛くなっていた。


未央は好きな男性のもとに逢いにいくため、支度をしていた。

名目は仕事であるし、間違いではない。未央は、月に何度かフリーランスの仕事をしていた。CADを使って設計図を描く仕事である。その仕事を貰うために事務所へ行くのだが、その担当の男性の雅之に密かに想いを寄せていたのである。

雅之と出逢ったのは2年前、仕事の紹介で出逢ったのだが、この時は特に恋愛感情も持たなかったのである。しかし、その後、雅之から野外ライブのチケットが余ってるからと誘われ、一緒に行って盛り上がった。この時から恋心を抱くようになったかもしれない。

雅之と秀二は正反対かもしれない。秀二は、野外ライブに行くようなタイプではない。人混みに酔って気分が悪くなってしまう人だ。体型も、雅之は肩幅が広くワイルドで男性らしいが、秀二はスリムで線が細い。性格は、雅之は明るく豪快で頼れる人だが、秀二は繊細で優しいが、落ち込みやすい部分も多かった。

「人は、明るい場所を好む生き物ではないかと思う」
未央は雅之の明るさが眩しかった。私生活が鬱々としているからこそ明るさに憧れるものだし、それは人として自然であるとも思ったのだ。
「逞しい腕に抱かれてみたいとさえ思う」
未央は想像しながら赤面してしまった。未央は下着から取り替えた。ピンクのレースが可憐でブラとパンティが上下お揃いのものを装着した。あまりに用意周到な自分に少し笑った。膝より少し短めのスカートをはき、フェミニンな服装をまとった。
「雅之さんから女として見られたい」

秀二とはセックスレスだった。最後にしたのはいつだったかすら思い出せないほどだ。抗鬱剤の副作用でひどく性欲が薄れてくると秀二が言っていた。たしかに、“それどころ”ではないだろう。
「夫婦だし一緒に乗り越えなければ。わたしがガマンさえすればいい」
未央は何も疑問を持たずに秀二に合わせていた。が、雅之に出会ってから、身体の内側から隠しても隠しきれぬ“女の業”が溢れ出すのを持て余していた。
「いったいどうすればいいの!! この想い!! この想いの持って行き場を!!」
容赦なく突き上げるてくるような本能に、未央は戸惑っていた。
「好きな人へ向かうエネルギーは恍惚感すらあるわ。でも、夫のことを思うと悲しくなる・・」
矛盾する想いを秘め、未央は秀二に笑顔で“行ってきます”と言って外出した。


打ち合わせの終了後、未央と雅之は二人でランチに出かけた。雅之の運転する車の助手席に未央は乗っていた。目的地へ向かう途中にラブホテル街を通った。
「あ、あのね・・ココ通ると近道なんだよ~」
「ふふふっ、誰もそんなこと聞いてないわよ!」
変に言い訳する雅之がカワイイと未央は思っていた。
「・・最近、行った? こういうとこ~」
未央は悪戯っぽい声で聞いてみた。
「いや・・行ってないなぁ。未央さんと! 行ってみたいなぁ~」
雅之はこういう冗談はサラッと堂々と言ってのける人だ。未央はポーッと赤面し、ミニスカートの足を組み替えた。
「もう~! やっぱり、そういう目的でココ通ったのね~」
「ダンナに殺されちゃうよ~俺!」
そうこうしてる内にラブホテル街を抜けた。未央は、内心“本当に入っても良かったのに~”なんて良からぬことを思っていた。上下お揃いの下着が役立つなんて思ったのだ。
「雅之さん、何で結婚しないの?」
雅之は未央よりも8才年上で、もうすぐ40歳になろうとしていた。
「好きな女の人が忘れられなくてね。アホだろ? 未央さんみたいな人が居たらすぐ結婚するんだけどね」
未央は自意識過剰ながら、“好きな女の人”というのが、自分のことでないかしらと思っていたのだ。
「秀二と別れて雅之さんと結婚できたらなぁ・・」
未央は口に出しては言わなかったが、こんなことを考える自分が怖いと思っていた。

雅之と一緒に食事をすることを、未央は心から楽しいと思った。秀二とだったら、いつも食事しながら暗い話になりがちだった。
「人は楽しい方へ傾くものだわ」
そう思いながら、未央は悲しくなった。涙ぐみそうになると、雅之が語りかけた。
「未央さん、悩みごとがあったら話してみてよ。・・ダンナのことかい? 未央さんの誰かを思いやるような気持ちが・・俺は好きだな・・」
「わたしも、雅之さんの頼りがいのあるところが好き」
未央は、お互いが気持ちの上では両想いのくせにハッキリと“好き”と言わないところが歯がゆくもあった。
「雅之さんはダンナの存在を意識している分、自分に遠慮をしているのかもしれない」
“手出し”をしないにもそのせいだろうと思っていた。

雅之と別れて、未央は家路へ急いでいた。帰宅途中も雅之との“脳内想像デート”を楽しんでいた。雅之が下着に手をかけるところまで想像して、一人で赤面していた。そして、幸せな気持ちに浸っていた。


自宅のマンションの入り口に救急車が停まっていた。
「何ごとかしら?」
未央は他人事のような気持ちで近づくと、秀二がタンカーで運ばれる姿が目に入った。
「しゅ・・、秀ちゃん!! 一体どうしたのよ!!」

未央は救急車に同行した。病院の検査では心電図も脳波も異常が無かった。
「精神的な発作でしょう」
と診断された。未央は涙が止まらず、雅之と出かけたことを後悔していた。
「わたしのせいで! わたしのせいで!!」
未央は以前にも増して、秀二に献身的に看病していた。

<おわり>

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

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