咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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B A B Y  D O L L~第44話~「三十路、本当の自分探しへ」
最終回スペシャル版です
朋乃の自分探しの旅は、これからです。


※この物語はフィクションです。興味のある方は、サラッと読んでみてくださいネ。


B A B Y  D O L L


~第44話~「三十路、本当の自分探しへ」



朋乃は実弟の晴樹の結納式に呼ばれていた。久しぶりに実家の家族全員が集まっていた。朋乃の母が思わずこんなことを言った。
「朋乃は可愛い孫を2人も作ってくれたし、晴樹も28歳適齢期で結婚してくれるし、これで早く孫でも出来ればウチは安泰だわ~」
朋乃はゾッとした。
「自分の子に孫が出来て初めて安泰なのか。早く結婚、早く子供、早く2人目、早く孫を・・・・。どうして女の人生は、こうも急かされるのだろうか」
そして、朋乃は意を決したように母にコッソリ耳打ちした。
「実はね、かなり前から精神病院に通院してるのよ。パニック障害っていう病名でね。でも大丈夫よ、クスリでかなり良くなってきてるから・・」
「ええーっ、それ本当なの? でも見た目は全然元気そうよね~。・・・このことは・・・・、晴樹夫婦たちには内緒にしていてよ。ウチの身内に精神病の人が居るって知ると、晴樹たちに迷惑がかかるから。このことはお父さんにも内緒にしておくから、何かあったら、コッソリお母さんに相談しなさいね。今日は大丈夫よね?」
偏見の塊りのような母のうろたえぶりが朋乃には可笑しかった。今は心療内科とかメンタルクリニックとかソフトな言い方をするところを、ワザと“精神病院”なんて言ってみせたのだ。
「父に内緒なんて言うのは、父から育て方の落ち度を指摘されたくないからよ。別に落ち度なんかではないのだけどね」
朋乃は自分の夫が病気に関して理解を持っていることを改めて有り難く思った。晴樹の結納式は滞りなくソツなく対応し、無事に済ませた。


それから数日後に高尾のお別れ&激励会の日がやってきた。会場は高尾が結婚披露宴をしたイタリアンレストランだ。本来なら子供を連れていくべきではないと思ったのだが、優菜ちゃんだけを連れていくことにした。なぜなら、色々と心の問題を抱えている朋乃の今の状態では、幸せで怖いもの知らずな高尾に気後れしてしまいそうだから、優菜ちゃんが朋乃の“守り神”になってくれそうな気がしたのだ。

会場へ着くと、綾さんが先に着席していた。少し遅れて高尾夫婦が登場した。高尾の夫フランチェスコは、優菜ちゃんを見るなり優しく話しかけていた。
「子供連れて来て、悪かったかしら?」
高尾夫婦も綾さんも構わないよ言って理解をしめしてくれていた。
「ウチも連れて来ようかと思ったけど、未だ乳飲み子だし、上の2人が面倒見るから大丈夫だよってきかないから~アハハ~」
「綾さん、高齢出産って、どう?」
「いや~~、産んで良かったよぉ! 子育ては体力的にはキツいけど、ベビーに癒されまくりだし、幸せをいっぱいくれるわ。パワーも湧いてくるしね。まあ、欲しかったからね・・ホント作って良かったわ~」
「それを聞くと、すごく励みになるわ~!」
高尾が感激にひたってると朋乃が口をはさんだ。
「高尾は子供は? しばらくは作らない派なの? でもなるべくなら早く作った方がいいわよ! 欲しいと思った時にスグに出来るとは限らないのよ」
朋乃は自分の経験から、切実な想いを込めて丁寧にアドバイスをしたつもりだった。すると、フランチェスコがわざわざ英語で返した。
「私たちはこれから新天地へ旅立つのです! 丁寧なアドバイスをありがとう。アナタのおっしゃることはごもっともです。私たちは色んな意味でチャレンジ精神を忘れたくない。これは夫婦で一致している。行き先がなぜ我が故郷のイタリアでなくNYなのかと言うと、イタリアも日本と同じ意外と保守的な国だ。いい年したら、結婚は?・・子供は?・・ホント同じ。うっとおしい(笑) なので、既成概念に捉われず個性的な生き方を尊重する人が多いNYの地を選んだ。どんなことがあっても、二人で乗り越えたい! そのために僕も苦手だった英語を随分マスターしたよ」
高尾は涙ぐんでいた。朋乃はつまらないことを言ってしまったと反省した。かって、自分が言われて散々嫌だったことを、今度は自分が他人に言ってしまっていたのだ。

「いや~~ん、英語なんて綾ちゃんサッパリ分かんないよぉ~! ずるいなぁ~、ねえ、何て言ったのよぉ? そっかぁ~、これからは語学の1つや2つマスターしないといけないのかなぁ~~」
綾さんの言い方が面白く、いっきに場が和んだ。
「朋乃さんは結婚して順調に子供2人を次々に授かって、可愛いお家も建てて、すべてが順調で羨ましいです」
「高尾だって、こんなカッコイくて素敵な旦那様が居て羨ましいわ!」
だが朋乃は内心では
「高尾は“のんき”で甘いわね! 何ごとも努力しないと! 簡単には得られるものじゃないのよ」
と思っていた。
「幸せなんて自分で決めるものだと思うわ! 私、一番下の子を未婚で産んだけど、自分は幸せだと思ってる。 高尾、フランチェスコ! あなたたちの勇気に感服するわ! 2人で手を取り合っていけば怖いものなしよ。こんな幸せなことはないわよ~」
テーブルでは拍手が沸いた。朋乃は、正直、無謀と思える高尾夫婦の計画だけど、30代で思い切ったことをやれる高尾が羨ましいと思い、心から応援したくなった。朋乃はどちらかというと他人から映る幸せを気にするほうだった。しかし、これからは綾さんの考えにシフトチェンジしていこうかと思い始めていた。他人から、どう見られているかばかり気にする人生が少し嫌になってきたのだ。朋乃が化粧室を借りようとしてると、厨房の近くでM男君とバッタリ会った。

「朋乃さんお久しぶりです。朋乃さん、以前よりも何だか柔らかな雰囲気になった感じがします。もちろん、前から綺麗で可愛らしい人だけど、どこか近寄りがたい感じがありました。今の肩の力が抜けた感じ・・とてもイイですよ」
朋乃は目からウロコで驚いていた。こんなことは自分では気がつかないことだったので、じんわりと嬉しくなった。

朋乃も綾さんも其々家族が待ってるため、会は1次会でお開きとなった。朋乃と優菜ちゃんで商店街をブラブラと歩いていると、優菜ちゃんが突然たこ焼食べた~いと、目の前のたこ焼屋さんの前で止まった。
「も~、しょうがないわね。そっか~、パーティでは、優菜ちゃんはあまり食べた気がしなかったのかもね」
朋乃はそう言いながら近づくと、そこで彩香のママがたこ焼を焼いていたのだ。

彩香からたこ焼店の話を聞いた時は想像もできなかったが、目の前に居る彩香のママはなかなか板についていた。彩香のママは朋乃親子を見ると大変喜びし、お代はいらないとサービスをしてくれた。優菜ちゃんは
「今までのたこ焼で一番美味しい!」
と言い、彩香のママを喜ばせた。テーブルでアツアツのたこ焼をほおばりながら、色んな話をした。

近くに彩香の元彼の大貴が働くスーパーがあり、イヤでも噂が聞こえてくること。大貴の嫁が年子で男児ばかり3人目を出産したこと。嫁と大貴の父が最近は険悪の仲であること。嫁がスーパーに口出しするようになり、パート従業員から嫌がられていること。最近、大貴がやつれていること等をまくしたてるように話した。

「女って豹変するよね~! あの嫁だって、昔はいかにも“清楚な良いお嬢さん”って感じだったのに」
朋乃はよくありがちな話だと思いながらも、自分も気をつけようと思い返した。店の前にテーブルが3セットほど置いてあり、周りは高校生たちで埋まっていた。店は高校生たちの溜り場になっているようで、彩香のママを慕ってる子たちが多いとのことだった。
「家に帰りたくない子たちが多いのよ。どうなってるんだ~!最近の家庭は!! 寂しい子たちが多いんだよね。ま、あたしも昔は不良だったし他人のコト言えないんだけどさ~。頼られるのは悪い気はしないけどねぇ~」
彩香のママは現在一人暮らしで、自宅で家出少女たちをかくまってあげたりもしてるのだと言った。
「自分自身も寂しさが紛れるし母親代わりをできるのが嬉しい」
と理由を語っていた。


『海と戯れるセラピー』に通いだして数ヶ月経ち、陽斗くんもかなり良くなって仕上げの段階に入っていた。陽斗くんは、同様の症状の子や発達障害の子たちと浜辺でワークを受けていた。その間、朋乃は早紀先輩とお話をしていたが、早紀先輩がスタッフに呼ばれて席を外すと、本棚にあったパニック障害に関する本を取って読んみた。

原因や治療法、自分で出来る改善方法などが書かれてあった。
「こんな改善方法なんて気休めだわ。これで治ったら医者は要らないって・・」
などと朋乃は思いながら飛ばし読みしていると、とても気になる記述があった。

それは、パニック障害の患者は圧倒的に女性が多く、7~8割を占める。しかも主婦に多い。・・患者と関わる多くは夫や家族である。・・発病で患者に対し献身的になる家族が多い。・・実はそれは、その夫や家族を無意識にコントロールしようとしている病・・。子供の頃、具合が悪いと訴えると両親が非常に優しくなり愛情を独占出来、味を占めたという記憶がないですか?・・・等々。

朋乃はパタッと本を閉じた。たしかに身に覚えのあることだった。
「発病してから夫はとても優しいわ。実は、自分の都合の良いように無意識にコントロールしているのだろうか?でも、朋乃自身はコントロールしているという意識は全く分からない。発病も突然だったし、出来れば早く完治させてしまいたいと思っている。今は調子も良く、クスリも軽いものになったが、クスリが全く要らない日が来るのだろうか・・」
朋乃は不安になった。

帰り道に朋乃は、彩香が彼氏と子供たちで4人連れ立って歩いているのを見かけた。彩香からビジュアルがイイと聞かされていた彼氏の蓮は、朋乃から見ても見とれるくらいのイケメンだった。
「いいなぁ~! あんな素敵なオトコと一緒に歩いてみたいなぁ~」
朋乃は素直に思った。そして、丸山室長のことを思い出した。
「何であんなメタボで不細工な男がイイなんて思ったのかしら? ちゃんちゃら可笑しいわ! ああ~目が覚めたみたい! あはは~。朋乃は、元々ビジュアル重視だったのよ。夫だって良いほうだわよ~・・・昔は! あはは~!」
朋乃は自分で自分が可笑しくなったが、笑える自分は未来が明るいなんて前向きに考えた。彩香のことを想うといつも意欲を掻き立てられる。彩香から“生きるエネルギー”を貰ってるのかもしれないと感じた。朋乃は彩香に感謝の想いを飛ばした。



それから1年が経過した。

朋乃はある中堅の会社で事務職のパート従業員として働いていた。働くことも病院と相談したが、軽い労働ならOKだと許可が出たのだ。フィナンシャル・プランナーの資格を生かして証券会社や生命保険会社もあたってみた。だが、例え“ライフ・プランナー”とかカタカナ職種名が付いていても、結局は外交員をやってほしいということなのである。自分が病気持ちであることを考慮して、闘争心を煽るような職種だけは避けたいと思ったのだ。

それから朋乃は肝心なことに気が付いたのだ。それは、自分が何をやりたいのか決めてないことだった。子育てが一段落がしたらバリバリのキャリアウーマンになると言っておきながら、ではいったい何をするのか!?全くビジョンが無かったのだ。どうやら、実態のないカタチだけに憧れを抱いていたようだったのだ。それに気付いてからは、“自分が何をやるべきか?” これから探していこうと思うようになった。

優菜ちゃんも小学校へ上がり、陽斗くんも元気に幼稚園に通っている。昼休みになり、近くのレストランで彩香とランチを一緒にする約束をしていたことを思い出した。朋乃と彩香の職場とけっこう近いのである。

朋乃は最近、自分のことを名前で呼ぶことを止めた。三十路で“朋乃はね~”は、さすがに痛いと思ったからだ。朋乃は既に自分自身のことを割りと彩香に話すようになっていた。彩香は、朋乃の不倫のこと、病気のことも知っている。彩香とは、いつの間にか無二の親友となっていた。本当に不思議な縁である。

「朋乃さんでも振られることはあるんだね~」
「そんなのよ~。このあたしが!・・だよ(笑)」
「でも、いいタイミングで別れたんじゃないかと思うわ。あれ以上続けていたら、朋乃さんの家庭も壊れていたかもしれないし」
「そうかもね。あたし自身がバランスを保てなくなって、暴走して自滅してたかもしれないわね。自分が壊れるだけなら未だいいけど、子供たちを巻き添えにはしたくないもの」
「あたしなんか特に暴走タイプだから~(笑) でも朋乃さんに阻止してもらったお陰で、あたしの場合は離婚にはなったけど、イイ感じで離婚したと思う」
「M男君みたいなイイ人を傷つけなくて良かったわよ~」
「この間ね、元パパ(M男君)に会ったんだ~。夜の遊園地で子供たちも連れてデートをしたのよ。元パパ、手作りのお弁当まで持って来ててね。美味しかったなぁ~! やっぱプロの料理は違うわ。イタリアに行ってから“楽しく生きること。人を楽しませる喜び”を学んだんだって! 今まで一緒に居た中で一番楽しくって、別れるの惜しい・・って思っちゃったわよ。でも、実は新しい恋人が出来たんですって! だから、もう彼には会わないことに決めたの」
「へぇ~! M男君、良かったじゃない。そうそう蓮とはどうなの? 彩香にしては結構長続きしてない?」
「そうなのよ~! もうかれこれ2年以上にはなるわよ」
「結婚とかは考えない?」
「それがね~、実はあたしがしたくなかったりして~あはは~。今、すごーく穏やかでイイ感じなの。逆に結婚が恐い。結婚したら崩れてしまいそうで・・」
「蓮、学校を卒業してキチンと就職もしたのに~」
「そうなのよ~、蓮の方がむしろその気で・・。最近あたし、コレ飲んでいるのよ。ピルよ! 蓮の避妊が甘くなってきて・・。あたしも生理前にヒヤヒヤするのイヤだからね。でも、ピルって結構いいわよ。ウチみたいなハードな仕事では生理日をずらせるし、生理もすごく軽いしお腹も痛くないの。それなら、もっと早くから飲んでおけば良かったわ。 蓮は未だ若いし、子供つくって色々背負わせるのは可哀想だわ。つくる時は、蓮が心から納得してから~って思ってるの。もう“デキちゃった”だけは避けたい!」
「彩香! 大人になったわね!! 昔と比べものにならないほど成長したわよ~! 前から思っていたけど、彩香の子供たちってホントにいい子に育っているのよね。彩香って、人を育てるのが上手いのかも~。年下の蓮と付き合えるのかしら?・・なんて思ったけど、蓮もイイ子に育ってるし(笑)」
「上手じゃないけど、育てるの・・好きかも~! これは発見したわ。だから蓮と飽きずに育んでいけるのだわ。でももっと早く気づけば良かった・・そしたら離婚しなかったかもしれないのに」
「M男君は勝手に一人で育っていくタイプだから、かえって別れた方が良かったのよ。・・でも、あたしは人を育てるのダメだわ! 子育ても下手だし」
「そんなことないよ~。皆悩みながらしてるのかも。子供から気づかせてもらうことが一杯あるし」
「たしかに~! ウチは陽斗くんが悪くなったお陰で、自分のことで色々気づきを得たし、いい方向へ進んだし。ムダなことなんて何一つないのかもね。あたしがパニック障害になったことも。今だ未だ完治してなくてクスリを飲み続けてるんだけど、今はね、“完璧に治そう!”と考えるより“病気と付き合って行こう”と思ってるの。そう思った方がラクなのよ」
「それで、ダンナさんともイイ感じになっていったんだもの」
「そうなの~。夫には申し訳ないけどね。あたし、もう1度、夫と恋しあえたらなぁ~って思ってるの。出会った頃みたいなのとは違うけど、何て言うか・・胸にじんわりとくるようなね」
「わあ~、いいなぁ~、そういうの~」
「そんなこと言っておきながら・・・実は今日・・・デートなんだけど・・」
「えっ? ダンナさんと?!」
「ううん、会社の男性から誘われたの。ホントは数人と飲み会だったんだけど、他の人たちが急遽キャンセルして、二人っきりになちゃったのよ。その男性は独身でなかなかの男前で素敵な人よ。何だか久しぶりにドキドキしちゃってるの!・・・えっ? ああ~、子供は大丈夫よ! 夫が看てくれるから。・・・えっ? そんな心配じゃない!って!・・・あはは~大丈夫よ。 今のあたしは病気持ちよ。どうしても行動に制限が加わるわ~」
「それがあたしの場合だったらマジでヤバいことになりそうだけど(笑)。ま、今は幸い年寄りばかりの環境で、そういうこともないんだけどね。え~~、でも朋乃さん、気をつけてよぉ~! 恋ってさ、予期せぬ爆弾みたいなものなんだから・・・」

「彩香が心配するほど、自分はオンナとして衰えていない・・ってこと」
朋乃は前向きに捉えていた。
「そんな風に自分を試してみることも時には必要だし、刺激も必要なのかもしれない。多分、その男性とデートしても、やっぱり夫が一番!!と、再確認するだけだろうと思う」
朋乃は強気で思っていた。朋乃と彩香はランチを終えて、それぞれの職場へと戻って行った。

<完>
長い連載、ご愛読ありがとうございました。

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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