咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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B A B Y  D O L L ~第43話~「パニック障害」
未だ最終回じゃないです(笑)
今回を含めてあと2回かしら。ちょっと名残惜しくなってきました(笑)
またまた長いです~


※この物語はフィクションです。興味のある方は、サラッと読んでみてくださいネ。


B A B Y  D O L L


~第43話~「パニック障害」


朋乃は病院のベッドの中に居た。意識はあったが頭がもうろうとしていた。朋乃は突然の激しい発作で道端で倒れ、救急車で運ばれたのだった。自分でも何か起こったか分からないが、今はとにかく生きていることにホッとしていた。しかし、死ぬんじゃないかという激しい恐怖を体験し、今でも怯えていた。そんな時、聞き覚えのある声がしてきた。夫と子供たちだ。

「朋ちゃーん、ああ、良かった~! すげぇ心配したぜ! さっき医者から聞いたよ。心臓も脳波も異常無いってな。命には別状なくて、ああ、良かったよ~! 過呼吸症候群って言うんだって。女性に多いらしく、過労やストレスがマックスになると起きやすいんだってね。 朋ちゃん、ごめんよぉ~! すごい疲れていたんだろうに、気づいてあげられなくって・・。もうさあ・・、仕事なんかしなくていいからさぁ~、ゆっくり休もうよ・・」
夫はそう言ってオイオイと泣き出した。優菜ちゃんは長女らしく
「パパ~、ママ~、大丈夫? もう~、パパぁ~、しっかりしてよぉ~」
と、しっかりとした口調で両親を励ましていた。
「アナタ・・、仕事は?」
「放り出して飛んで来たよ。朋ちゃんの方が大事に決まってるじゃないか!」
朋乃はボロボロと涙が溢れてきた。こんなに朋乃のことを大事に想ってくれてる夫なのに、申し訳ない気持ちになったのだ。しかも、発作の原因と思われるものが単なる疲れではなく、不倫の清算から来る負の感情からだったから、余計に罪悪感にさいなまされた。


夫の助言通り、朋乃はしばらく就職活動は止め家でゆっくり休養することにした。しかし、かえって色々考え過ぎて不安な気持ちがよぎっていた。
「丸山室長は朋乃と別れても、家庭でオメデタイ幸せな出来事があり、別れの辛さをすぐに転化させることができるだろう。それに比べて朋乃は、別れの辛さ喪失感に加えて就職活動もうまく行かず、心はどん底に落ちたままよ」
人は何かで失敗をしたら、別の何かで成功を企み気持ちを取り返そうとするものだ。朋乃は別れの喪失感を、就職の成功で埋めようとしていた。

丸山室長が別れた後も幸せだと思うと、朋乃は悔しくて呼吸が苦しくなってきた。苦しくて苦しくて気が付いたら夫の携帯に電話していた。
「ど、どうしたんだ・・・?」
「助けて! く、苦しい・・」
朋乃はそれ以上言葉を発することが出来ず、その場でうずくまってた。夫の携帯からは、陽斗くんの泣き声だけがけたましく響いていた。夫は朋乃のことが心配で、すぐに自宅へ駆け込んだ。
「アナタ、ごめんなさい。忙しいのに。また、過呼吸の発作が起こってしまったの。もう、怖くて。また死ぬ思いして・・・。でも、しばらく休んだら発作は止まったわ。ごめんなさい。すごく不安なの。そんな時はアナタの声を聞くと安心するの・・」
夫は何度も大丈夫か?と繰り返し言ったが、朋乃の発作が沈静化すると安心して再び出社して行った。それから、3~4日おきに発作が習慣的に起こるようになったが、ビニール袋を口に当てて息を吐くという応急処置で自分で発作を止める方法を覚えた。しかし、いつ発作が起こるか分からないという予期不安から、殆ど外出も出来ず家に閉じこもりがちな生活になった。不安でどうしょうもない時は、夫の携帯に電話をしていた。話せばとりあえず不安は落ち着くからだ。段々とそれが多くなり、1日に10回近くになった。仕事中に頻繁にかかる電話に、さすがの夫も少しイラ立つようになった。

その後、朋乃と夫は心療内科を訪れた。診察の結果『※1パニック障害』と診断された。現在は、パニック障害はクスリで発作を止めることができるそうだ。クスリを貰う為に朋乃たちは待合室に居たが、とにかく患者が多くてやっと座れたのだ。患者の多くは老若男女、パッと見で“病気持ち”は見えない。体格の良いスポーツ選手のような人も居た。心療内科が大盛況になるくらい、心が病んでる人が多い世の中なのだ。

※1 正しくは『パニック・デス・オーダー症候群』。突然、呼吸が苦しくなったり、震えたり、しびれたり、死ぬんじゃないかと思うような恐怖を伴う発作が定期的に起こること。心臓などに異常はなく、精神的な発作で、ストレスなどが原因だと言われる

朋乃は毎日キチンとクスリを飲むようにすると、飲み始めてから1度も発作が起こらなくなった。クスリが効くと思うと恐怖感から開放され、ようやく安心感を得るようになった。だが、根本的な心の問題が解消されたわけではないので、しばらくすると心が鬱々としてきた。再び病院へ行き、抗鬱剤と睡眠薬が追加された。クスリの効果は大きく、飲むと気持ちが安定してきた。

夫は朋乃のことが心配で、買い物なども常に一緒に行くようにしてた。時には、料理や掃除を手伝うこともあった。ついには、職場で自ら降格を申し出て役職を課長から課長補佐にしてもらった。そのお陰で激務から逃れることが出来、比較的早く帰宅できるようになった。そして家事や子育てを手伝い朋乃の負担を軽くしょうとした。朋乃は夫に申し訳なく思ったが、早く帰って来てもらうとやはり安心感があった。

「片方が辛い時は支え合うのが夫婦だよ。気にすんな。実は俺も激務から逃れて助かってる。今までいかにプライベートを犠牲にしてたか分かったよ。朋ちゃん、ホント今までごめんな~! 朋ちゃんがこんなになったの、自分のせいでもあるよ。家庭のこと、朋ちゃんに任せっぱなしだったもんな。これでは朋ちゃんが疲れるの、当たり前だよ。しっかり者の朋ちゃんに甘えていたよ。この病気って、完璧主義で責任感が強すぎる人がなりやすいんだって言ってたし。朋ちゃん、悩みとか愚痴とかあったら何でも話すようにしてよ」
朋乃は
「違うのよ。実は・・・」
と、言いかけたが止めた。夫の優しさに涙が溢れた。朋乃は自分の身勝手さを棚に上げても、この人と結婚して良かったと感激したのだった。

朋乃は不倫していた時のことを思い出していた。朋乃は、丸山室長に癒しを求めていたのかもしれないと思っていた。丸山室長の前では、飾らず自分らしく振舞えていたのだ。
「なぜ夫の前では丸山室長の前のように振舞えないのだろう。“いい妻”を演じてるから? そういえば、子供の頃も常に“いい子”を演じていたわ。そこら辺は、今後の治療の課題であるのでしょう」
朋乃はカウンセリングなども積極的に受けてみようと考えていた。朋乃の発作がキッカケで夫が変わろうとしているので、いい方向へ改善するのではないかと前向きに捉えていた。

「それと、男と女の違いもあると思うわ。男は種をばら撒く性で、女は受け止める性だわ。男はばら撒いてものごとを拡大させることができるけど、女は1つのものを大事に育てる性質。不倫のような不毛の愛でも、温めて育ててしまおうとしてしまうのね」
朋乃の中にはまだ丸山室長への想いが根付いており、簡単には抜き取れない状態であることを認めていた。色んな負の感情が発芽するのである。
「もしも不倫に代償があるというならば、この想いがそうなの?」 
朋乃は簡単には割り切れない想いを抱いていた。


天気の良いある日、朋乃は庭で子供を遊ばせて居ると宗教関係の勧誘らしきオバサンが訪ねてきた。それは“幸せな家庭づくりを推進する”団体だったが、朋乃は少しだけ話を聞いて丁寧に断りを入れた。するとその人は逆上したのか、捨て台詞を吐いた。
「ま! こんな立派なお家に住んで、このご時勢で専業主婦で優雅に子育て出来るなんてゼイタクよね~。いいわねぇ~!」
と、言い去って行った。朋乃は台所から塩を持ち出し撒いた。
「宗教をやってる割には、人間がデキてないわよね~。人の事情も知らないで!! 働きたくても働けない事情の人も居るのにぃ~」
そう思って怒りに震えた。そして、緊急用のちょっと強めのクスリを飲んで心を落ち着けた。何も知らない人から見れば、朋乃は幸せそうに見えるらしかったのだ。


数ヶ月が経って、朋乃はとうとう30歳の誕生日を迎えた。“病気持ち”の状態で迎えることは影を落とすが、夫は早めに帰宅し料理を作ってくれ、子供たちからも手作りのプレゼントを貰い、アットホームでひょっとしたら今までで最も幸せな誕生日だったかもしれないと思ったのだ。

しかし、幸せで穏やかな日々は長く続かなかった。この頃は陽斗くんの様子が変だった。病院に診せると『チック症』だと言われた。顔を歪めたり、やたら首を振ったり、やたら奇声を発したり、動作に落ち着きがないのだ。もともとあまり落ち着きがない方だったが、その度に朋乃は激しく叱責していた。朋乃は、陽斗くんには常にイライラさせられ、必要以上に叱ることが多かった。

朋乃は、自分の育て方が悪いのかと責めて追い詰められて、しばらくは飲んでなかった抗鬱剤に手を出してしまった。夫もこの状況に困り果てていた。そして、とうとう朋乃は早紀先輩の名刺を手にし、電話したのだった。


自然の波の音が心地良いオーシャンビューのオフィスで待っていると、早紀先輩が入ってきた。オフィスの本棚には、メンタル系の本が沢山並べられてあった。
「ココ『海と戯れるセラピー』では、多くのチック症の子供さんを扱い、改善させてきてるわ。だから安心して任せてね。それから、ウチでは子供の病は大人と連動してると考えてるのよ。子供を診るまえに親御さんの改善から始めるのよ。実際、親がかなりの悩み・ストレスを抱えていることが多いわ。親が改善されるだけで、子供にかなり改善が見られるのよ。朋乃さん、まずアナタのセラピーから入りたいわ。大丈夫よココは秘密厳守よ。遠慮なく何でも打ち明けて・・・」

「自分は恥をしのんでここへ来たわ。おっしゃる通り、自分はすごい悩みを抱えてる。心療内科にも通院もしているわ。内心いい気味だと思ってるんじゃない! 昔、アナタの好きだった人を奪って結婚して・・。幸せじゃなくなって・・バチが当たったのよね!」
「そんなこと思っていないですよ。私は上岡課長に勝手に片思いしてただけで、付き合ってたわけではないのよ。だから奪略愛でもないし、アナタの結婚は正しいのよ。そうそう・・・怒りはね、まずドンドン吐き出してね」

すると、今度は朋乃が泣き出した。
「・・・もう、上岡課長じゃないのよ! 課長補佐よ。自分のせいなの・・」
そして、早紀先輩のペースにはまり、不倫をしてたことも打ち明けた。ただし、同じ会社の人であることは伏せ、体の関係があったこともオブラートに包んだ表現で伝えた。そして夫婦生活が途絶えていったこと、夫婦関係についても語った。不妊治療して苦労して子供を作ったこと、再就職がうまく行かないことも話した。もちろんパニック障害であることもだ。

「Mさんとの別れ、とても辛かったでしょう。この手のことで、誰にも打ち明けられず、悩んでココへくる奥様も多いわよ。どうかご自分を責めないでね」
朋乃は、不倫を含む悩みを他人に初めて話したのだ。彩香にもあまり話したことがなかった。それは、負けず嫌いで自分の落ち度を見せたくないとの思いからだったが、話してしまうと、それだけで何だかとてもスッキリした。朋乃はその後も、何度も早紀先輩の所を訪ねてセラピーを受けていた。


ある朝、綾さんから久しぶりにメールが届いた。内容は、高尾が会社を辞めて、夫婦でNYへ渡るそうで、“お別れ&激励会”に来ませんか?というものだった。朋乃は、だいぶ症状が軽くなってきたといえ、独断でOKをせず、病院の判断を伺いに行った。すると、先生からこのような言葉を頂いた。
「だいぶ良くなってきましたね! アナタ自身が治そうと前向きなので、それがとても良い結果に繋がっています。パーティ? そうだね~、気晴らしに参加してみるといいね。ここで難なく楽しく過ごせると、それが自信に繋がるでしょう。普段飲むクスリは少し軽めでもいいでしょう。外出時は、緊急用のクスリを忘れないようにね」
朋乃は病院の先生から褒められたことが嬉しかった。どんどん良くなってきていると何だか前へ進んでいる気がしてきたのだ。それと同時に、陽斗くんのほうの症状もだいぶ改善していった。

夜眠ろうとすると、夫が手を繋がないか?と手を伸ばしてきた。夫の手は温かく、こうしていると心が穏やかに満たされてくる。
「あの・・手を繋ぐだけでいいから・・。こういうスキンシップって大事なんじゃないかと思ったんだ。毎晩、こうしてもいいかな?」
朋乃は嬉しかった。ずっと、一生こうしていたいと思った。

<第43話終わり、44話最終回へ続く>




テーマ:オリジナル小説 - ジャンル:小説・文学

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