咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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B A B Y  D O L L~第40話~「宴の後の厳しい現実」
甘い宴の後、現実の厳しさをひしひしと感じる。


※この物語はフィクションです。興味のある方は、サラッと読んでみてくださいネ。


B A B Y  D O L L


~第40話~「宴の後の厳しい現実」


日帰り旅行以来、もう2ヶ月ほど朋乃は丸山部長と逢っていなかった。在宅の仕事の方も、その間全くなかった。時期的に年度末・年度始めで会社自体が忙しいというのもあるのだろうと朋乃は納得させていた。朋乃のほうも、優菜ちゃんの保育園の入園の準備等でそれなりに忙しく、何とか気持ちを紛らわすことが出来ていた。

だが、メールのやり取りは割りと頻繁にしていた。子供たちと遊んでる時でも、一瞬だけ甘いひとときに浸ることもあった。丸山部長宛てに仕事の励ましのメールを送ったり、たまにはちょっと際どくランジェリー姿の画像付きメールを送ることもあった。

「恋って、いくつになっても、どんな状況であっても・・楽しい、嬉しい、幸せ!」
と、朋乃はハイテンションであった。何が起きても、怖くないかもしれないと思うことが怖くもあった。昔、誰かの歌の歌詞であった“ヤバい、ハイテンション”をいうフレーズを思い出していた。


朋乃は久しぶりに会社に出向いて仕事の打ち合せをすることになった。本当は会社内でなく外で打ち合わせがしたかったのたが、丸山部長の都合上仕方なく応じた。やはり会社へ出向くととても緊張する。外での打ち合わせは、半分以上デート感覚だったと改めて思ったのだ。

オフィスへ着くといつもの場所に丸山部長の席が無かった。周りに尋ねてみると、丸山部長は今年度から部長でなく室長という肩書きになったそうなのだ。それで居場所も変わっていたのだ。
「丸山室長! 昇進おめでとうございます。 も~、ひとこと教えてくれてもよかったのにぃ~」
丸山室長は、すまん、すまん・・と侘びながら、多忙だったことを言い訳した。昇進しても昔と変わらずフレンドリーで腰の低い人のままだった。だが、会社内ではさすがに“まるっち”とは言いにくかった。

「会社までわざわざ来てもらったのは、実は理由があってな。朋乃チャンの仕事の担当が替わることになったんだよ。今までは私から直に打ち合わせをしていたけど、これからは違う人になるんだ。・・・紹介するね。ちょっと待っててね」
それから、新しい担当の『沢田』という男性社員を紹介された。年齢は夫と同じくらいに見えたが、“平”のようである。沢田は全体的に薄い顔だちであまり愛想がいいとは言い難く、冷たい感じすらあった。打ち合わせは丸山室長と共に行われたが、沢田の説明はどこかぶっきらぼうだった。これから、この人と仕事をしなければならないと思うと、朋乃は哀しくなった。

会社を後にした後、朋乃は丸山室長にメールで噛み付いたが、申し訳ないの一点ばりだった。たしかに、室長という立場の人が朋乃みたいな下っ端に直で打ち合わせするのも変だし、以前よりも多忙をきわめているようだったので仕方がないと頭では理解した。朋乃は、これから何を楽しみに生きてゆけば良いのだろうか・・と、寂しい気持ちになった。
「けど、別れたわけではないんだから! まだ繋がっているんだから!」
と、思い直した。そして、丸山室長との逢瀬の約束も取り付けたので、朋乃はようやく気分が上向きになった。


数日後、朋乃は依頼されていた仕事を仕上げて、会社で沢田に渡した。沢田は相変わらず無愛想だったが、朋乃は思い切って次の仕事のことを聞いてみた。
「次の仕事? そんなの無いよ! 当分無いかもしれないね。あなたも知ってる通り、不景気で厳しい世の中なんだぜ。外注も減らしてるっていうのに。仕事ねぇ・・・、主婦の片手間で出来るようなのは無いから~! ま、何かあったら、また連絡するからさっ」
朋乃は、非常に嫌な気持ちになったが、愛想笑いを作って大人な対応をした。
「マジで当分仕事がないんだろうな~」
と予感がしていた。社内の廊下を歩いていると元同僚に会った。子供を産んで1年ほど育児休暇を取って、復帰したばかりだと言う。朋乃は羨ましくて仕方なかった。

朋乃は彩香の家でくらだない話して気持ちを慰めようとしていた。彩香の近況はというと、美月ちゃんが小学校に入学したそうだ。それを聞くと、随分年を取ったんだなぁ~と思ってしまう朋乃だった。彩香が勤めている老人施設は保育園も経営しており、従業員は破格の値で子供を預かってもらえるのだ。託児は24時間営業で夜勤の時も預けて働けるシステムになっていた。朋乃は、彩香の子供を持ちながら仕事が出来る環境をとても羨ましく思っていた。
「ねえ、蓮とはどうなの? 交際は順調なの?」
「蓮ね、時々泊まりにも来るのよ」
「へぇ~、子供を巻き込んでるんだ~! 蓮は、子供たちとうまくやれてるんだ~」
「うーん、蓮はちょっと子供が苦手みたい。でも、ぶっきらぼうではあるけど、誠意を持って接してくれているのよ。少しずつ慣れて仲良くなっていってるとは思うわ」
「彩香のママは? 認めてくれてるの?」
「実はね、ママ、出て行ったんだ~。あ、ケンカとかじゃないよ。『男と暮らしたいから~』とか言ってたけど、詳しくは分からないわ。それからママ、風俗から足を洗って『たこ焼きの店』を始めたのよ!結構お客さんも多いらしいのよ。ねえ~、今度行ってみようよ!」
「彩香のママは、彩香に気を使って出て行ったんだなぁ~」
と、朋乃は思っていた。遠まわしに娘の幸せを考える良い母親なのだ。朋乃は、彩香が仕事も恋も順調で喜ばしく思う一方で、少し寂しさも覚えていた。

朋乃は、そろそろ本気で働きたいと思うようになった。
「だいぶ育児からも手が離れたし、在宅の仕事もアテに出来ないし、住宅ローンに子供の教育費・・お金はいくらあっても足りない。それと、年齢的な問題もあるわ。朋乃は現在29歳。30歳を過ぎると就職はさらに厳しくなるでしょう。何としても20代の内に仕事を探さなければ・・!」
と、焦っていた。

求人雑誌をいくつか購入して、保育園に優菜ちゃんを迎えに行き、さらに実家に寄って陽斗くんを迎えに行った。実家で一服していると、朋乃の母が何か言いたげだった。
「これから孫たちの面倒を見れなくなるかもしれないんだけど。・・・実はね、本格的に働こうかと思ってるんだ~! 仲間数人でお惣菜やお饅頭を製造する会社を起業しようと思ってるのよ。資金は、市の商工会議所が助成金を出してくれるからチャンスだと思ってね。今までは、自分のことよりも家族の為にって生きてきたけど、これからは、自分のため、世の中のために生きたいんだよね~」
「ええ~、そんなぁ~! その話、急なの~?」
朋乃自身がこれから本格的に働きたいと思っていた矢先、母の方に先を越されてしまった。
「もう母をアテにも出来ないんだ~。でも今まで母に頼り過ぎていたかも・・」
と反省もした。

朋乃は、母が働くことに関しては、ちょっと複雑な想いがあった。何せ、朋乃に“女は結婚して、子供を2~3人産んでこそ幸せ”と植え付けたのは母だからである。母には姉にあたる伯母が居て、伯母は独身で産婦人科の医師だった。朋乃は小さい頃から、美人で聡明でいつもブランド品を身につけて、高級外車に乗り高級マンションに一人暮らししていた伯母に憧れを抱いていた。しかし、母は子供の頃からいつも姉と比較されて育ったため、姉に対してやや卑屈な感情を持っていた。
「ブランド品なんて、幸せじゃないから見せびらかすように身につけるのよ」
なんて、母は伯母のことを言ってたし
「結婚もできなくて可哀想!」
とも言っていた。伯母は親戚の集まりには多忙を理由に欠席することが多かった。そのことに対しても
「結婚して子供が居る人ばかりの中では来にくかったのよ」
などと言っていた。そんな伯母は、40代前半で過労死してしまう。葬儀では母は大泣きしていたが
「せめて、結婚だけでもしてれば良かったのに~。働きづめで~! 可哀想に~!」
それは母だけでなく、他のおばさんたちも同じことを言っていた。朋乃もそのことに関しては若いなりに何となく理解は出来ていた。そして、それが今後の朋乃の生き方に影響を及ぼしていった。
しかし、伯母は自分が分娩担当した赤ちゃんの写真を全て大事にとっており、宝物のようにしていた。朋乃は今だから思えるのだが、伯母は結婚や出産よりも仕事を生きがいにして案外幸せだったのじゃないかと思っていたのだ。


朋乃はドヨーンとして重い気持ちでいたが、目の前に子供たちが居ると暗い気持ちのままでは居られない。カラ元気で子供の相手をし、夜になって子供たちも眠りにつくと、朋乃は夫と二人っきりでTVを見ていた。
「そろそろ本格的に働こうかと思うのよ。在宅の仕事ももうなくなっちゃったし、これからはお金の要ることばっかりだしね~!」
「そろそろ、外の空気が吸いたくなったか~! そうだなぁ~、1日4~5時間で週3日とかのパートなんかでいいんじゃない?」
「そんなんじゃー、全然お金にならないんですけど・・。保育園は夕方まで預かってくれるから、働くんならフルタイムの方がいいと思うわ」
「うーん、ま、子持ちだと就職は難しいよ~。もうそんなに若くもないし。そんなに簡単には仕事は見つからないと思うけど・・・。」
朋乃は夫の言葉に少々ムカついていたが、やはり現実は厳しいのかもしれないとも思っていた。
「けど、探してみなければ分からないわ!朋乃は色々資格も持ってるし!」
と、強気でいた。
「話変わるけど、そうそう・・・・聞いた話なんだけど、丸山室長さ~、4人目の子供が出来たんだって!! スゲ~な! もう40代半ばでしょ~! やるな~! ・・・ん? どうした? 朋ちゃん、聞いてる?」

<第40話終わり、41話へ続く>

テーマ:自作恋愛連載小説 - ジャンル:小説・文学

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