咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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B A B Y  D O L L~第37話~「罪悪感」
それぞれの変化。それぞれの道。


※この物語はフィクションです。興味のある方は、サラッと読んでみてくださいネ。


B A B Y  D O L L


~第37話~「罪悪感」



朝目覚めて鏡を見ると、いつになくお肌が艶々としてハリもある。
「すごいわ! 恋のパワー! 高い化粧品なんかよりずっと効果があるわ」
朋乃はしばらくうっとり眺めていると
「ママァ~!」
と、子供たちの声を聞くと急に現実に戻った。

子供たちに、おみやげの大きなぬいぐるみやオモチャを渡すと、奇声を上げて喜んではしゃいだ。両親にも普段手に入らないようなお菓子のおみやげを渡した。朋乃がここまでするのは、罪滅ぼしかなもしれないと思ったのだ。

それから、朋乃は思い出したように
「昨夜の着信は何の用事だろう?」
と、彩香にメールをした。しばらくすると電話が鳴った。
「昨日は突然ごめんね。実はね・・・渡邊さんが・・渡邊さんが・・・昨日の夜、亡くなったの・・」
彩香は既に泣き声になっていた。いまにも泣き崩れそうな勢いである。しかし、どんなに彩香が悲しんでも朋乃は冷静で人事のようだった。
「・・・そうだったの。それは・・悲しいね。彩香、昨日電話あったのに出れなくてごめんね。実はその時間、ちょっと取り込んでいて・・・。一番辛い時になぐさめてあげれなくで・・ごめんね。あっ、葬儀とかは行くの?」
「うん。たぶん、施設の皆と一緒にお通夜と葬儀に行くことになると思う。今日、昼頃ちょっとだけ時間取れる?」
「あ・・うーーん・・、今日はちょっと・・ムリっぽいなぁ。ごめんね~。電話で良かったら今から話を聞くけど・・」
朋乃は、今日も丸山部長とランチをする予定だったのだ。今、自分自身が幸せなため、彩香の悲しみモードになかなか合わせきれないのだ。頭の切り替えは大変だと思っていた。

「朋乃さんにも都合があるよね。ごめんね~。じゃあ・・今、電話でもいい?・・・・亡くなった時はもう・・気が動転しちゃって・・。昨日、夜勤だったの。渡邊さんはあたしの絵をとうとう描き上げたの。そして『なんか疲れちゃったな。ちょっと寝るね。彩香・・今日はずっと傍にいてくれ。手を握っててくれ』って。しばらくは、手を握って上げてあげてたわ。安らかに眠っていてね。・・あ、まだ死んではいないわよ。それから、あたしも忙しいんで他の人のお世話をするため、そぉーっと、渡邊さんの元を離れたの。2時間程して帰ってきたんだけど、何か様子が変。『渡邊さん!』って呼んでも・・・呼んでも返事が無いの・・・それから所長呼んだりして・・死亡が確認されたの。ああ・・あたしのせいだわ! あの時あたしがちゃんと傍に居なかったから!!」
「彩香のせいなんかじゃないわよ。自分を責めないで~。老人施設って“終の棲家”みたいなものよ。いつかは誰でも亡くなるのよ。渡邊さんは84歳、大往生よ。彩香の絵を描き終えて、彩香が手を握ってくれて・・・これ以上にない幸せな亡くなりかただったと思うわ」
「ホント?」
「そうよ。だから・・施設を辞めるなんて、変な考え方はしないようにね」
彩香もだいぶ落ち着きを取り戻していた。
「朋乃にはよく理解できないけど、これも1つの愛のカタチなんだろうか」
彩香の悲しみ方は、まるで愛する人を亡くしたかのようにも見えたのだった。


朋乃は約束通り丸山部長とランチへ出かけた。友だちと男・・・どっちが大事なんだろうと考えたが、朋乃の行動は既に“男”を選んでいる。地下にある隠れ家のような和風レストランで食事をした。明るい場所を避ける感じが、朋乃たちの関係にピッタリだと思った。丸山部長が急いでる風だったので、ランチは早めに切り上げ、夕方からも逢う約束を取り付けた。

やはり時間に限りがあるため、コンビニで軽食を買ってホテルへ直行した。1度火が付くと、もうとどまるところを知らなくなる。大胆な行為にも臆せず進んでしまう。2時間程、抱き合ってまどろんで、丸山部長は仕事があるため、ホテルを後にした。朋乃も急いで家(実家)へ戻り、子供たちと夕食を共にした。夜の9時前に、夫の携帯に電話し、子供たちの声を聞かせた。夫は喜んでいたが
「昨日の夜はおばあちゃん(朋乃の母)からの電話だったよ。朋ちゃん、お出かけしてたんだ! ま、たまにはハメを外すのも必要かもな~、ははは~」
夫の声に、朋乃は心臓がバクバクしていた。

次の日、朋乃は自分の家へ戻り、出張帰りの夫を“これでもか!”というほど優しくもてなした。夕食には夫の大好物を、“とっても寂しかったワ”などと普段は言わない甘いセリフを言ったりもした。夫の背広のポケットにキャバクラ女性の名刺が入っていたが、見て見ぬふりをした。いつもなら烈火のごとく怒るであろう。この優しさは罪悪感から来るのなのだろうかとも思ったりした。

朋乃はふと思った。
「丸山部長も家庭では、奥さんや子供たちに“これ以上にない優しさ”で接しているのではないだろうか? そう、罪悪感を転化させて!」


あくる日、朋乃と子供たちは育児サークルのイベントに参加していた。人形劇や紙芝居では、さりげなく倫理観をもりこみ、子供たちに“正しい教え”を植えつけていた。ここに居るママたちは、ホントに“子供想いの良いママたち”だと思う。朋乃も他のママたちからは、“そんな風に見られてるのかな~”なんて考えていた。朋乃は、自分がひどく偽善者に思えた。しかし、他にも朋乃と同じ状況のママも居るかもしれない。表面からは分からないものだ。

ここに居るいかにもママって感じの人だって、“女”には違いないのだ。家庭内で“女”の部分を発揮出来てるのだろうか? 本来なら、外で求めず、夫婦間で発揮出来るカタチが一番いいのであろう・・と、朋乃だって思うのだ。

優菜ちゃんに突かれて、朋乃は“ハッ”と我に帰った。意識が遠くへ飛んでいたみたいだ。朋乃は、自分自身が宙に浮いてるようで定まってない感じに少し危機感を覚えた。


渡邊さんが亡くなって49日も過ぎ、彩香と落ち着いて話せる状態になった。

「あたしをモデルにして描いた絵の裏側に『愛する彩香へ。今までありがとう。この絵をいつまでも大事に持っていてほしい』と書きなぐってあったの。この絵、あたしが貰ってもいいのかな・・って思ってたら、渡邊さんの親類関係者が絵を持って行ってしまったの。『この絵は30万以上の値がつくものなんだぞ! 大事な遺産なんだ!』って」
「わ~、何か相続争いに発展しそうね~。渡邊さんって、奥さんも亡くなってるし子供も居ないから・・これは相当揉めそうね」
「葬儀では、あたしも睨まれたわ。『アンタがよく世話したそうだが、金目当てか!?』『愛人か?!』とかね。怖かったわ。何だか心にポッカリと穴があいたようで、色々といたたまれなくなって、施設を辞めようかな・・って考えてたの。そしたら、所長の奥さんから引き止められた。『辛いだろうけど、辞めるなんて言わないでおくれよ。あの気難しい渡邊さんをよく世話してくれて感謝してるんだよ。アナタはもう、この施設には無くてならない人なんだよ。他のお年寄りたちにも評判がいいんだよ』って。あたし嬉しい。今まで職場でこんなに必要とされたことって無かったから・・」
彩香は涙を浮かべていた。“特別手当”も渡邊さんが亡くなったので、これからは支払われなくなるらしいが、彩香はそんなことはどうでもいい感じだった。朋乃は
「彩香、すっかり良い人になっちゃったな~」
と、喜ばしい反面少し寂しさも感じていた。
「朋乃は何やってるんだろう。悪いコトしているし。何だか自分だけ成長出来てないみたい」
なんて、思っていた。

「彩香、1つ聞いていい。渡邊さんのモデルをしてる時って、どんな感じだったの?」
「うん。じーっと見つめられるとね。体の底から熱くなってくるのが分かるの。よく分かんないけど、あたし、活き活きしてくるの。あ~、生きてることが嬉しいって! じっとしていても全然辛くないのよ。寒さも感じないの。もっと見て! あたしを感じてほしいって!」
「何だか・・・セックスみたい。実際、そんなことしてないのに・・」
「あ、そうそう。セックスよりスゴイかも。だって、もう、こんなの初めて!って感じで・・」
「それを渡邊さんは、黙々と描くの?」
「うん。渡邊さんも普段と違って、凄く活き活きしてるのよ。おじいちゃんなのに、何だか青年に見えてくるの。昔は凄い男前だったんじゃないかなぁ~って思ったわ。あたし、裸になってることは別に恥ずかしくないんだけど、描いた絵を見るとね・・・恥ずかしいの。だって、あたしの全てを!内面まで!・・熱くしているところとか全部とらえていて・・。もう! 恥かしいったら!」
彩香は頬を紅潮させていた。朋乃からしてみれば、人前で裸になるだけでも恥ずかしいけど、彩香の気持ちも分かるような気がした。彩香の体験したことが朋乃には“崇高な愛”に思えてみえていた。その点朋乃の方は、よくある人妻不倫の形態だ。しかし、誰にも負けない愛がここにも存在してる!・・と強気で思っていた。


それから、朋乃と丸山部長は、月に1~2回の頻度で逢瀬をしていた。殆ど、仕事を理由にして時間を作っていた。丸山部長も朋乃を喜ばすことを楽しんでるようかのように思えていた。


そんなある日、朋乃の家のポストに1枚のハガキが届いていた。宛先は高尾からで結婚披露宴の招待状だった。朋乃は驚いていた。何故なら、高尾は“結婚は30歳過ぎでもいい”と、口グセのように言ってたからだ。
「あの高尾も駆け込み婚? 30を前に焦ったんだろうか? お見合いでもしたのかしら?」
などと考えていたら、相手の名前は外国人だった。
「イタリア人っぽい名前ねぇ」

披露宴当日、朋乃は胸元が思いっきり開いた黒のセクシーなドレスで登場した。所帯じみて見られたくなかったし、イケナイ恋の片燐が押さえきれずに表れたのかもしれない。披露宴はイタリアン・レストランを貸しきって行うレストラン・ウエディングだった。そして祝儀は受け取らない会費制だった。

席へ着くと、懐かしい面々が揃っていた。

<第37話終わり、38話へ続く>


テーマ:恋愛:エロス:官能小説 - ジャンル:小説・文学

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