咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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B A B Y  D O L L~第35話~「ママだけで終わりたくない」
心の奥でモヤモヤ、いったい何を切望しているのだろう。


※この物語はフィクションです。興味のある方は、サラッと読んでみてくださいネ。


B A B Y  D O L L


~第35話~「ママだけで終わりたくない」


朋乃の第2子は男の子で『陽斗(はると)』と命名された。子供は2人、男の子と女の子を1人ずつほしかったので、当初の希望通りである。体外受精の際に“男の子がほしい”と訴えたことが、希望通りの性別に繋がったのかどうかは判らないが、とにかく嬉しかった。

あっという間に半年が過ぎたが、未だ仕事は再開していなかった。子供を2人もかかえていると、自宅での仕事はなかなか難しい。保育園に預けようかとも思ったが、通勤ならばそれも出来るが、在宅ワークでしかもそれほど仕事量もないならば保育料が勿体ない。妊娠前から始めたフィナンシャル・プランナーの勉強も、中断されたままになっている。マイホーム関連に意外と時間を取られてしまったからだ。


朋乃は新築の家に彩香を招待した。彩香との付き合いも長くなったが、家に呼んだのは何と初めてなのである。引っ越す前のボロい社宅は見せたくなかったし、お互いの家は歩いて行ける距離ではないので、マイカーを持っている朋乃が彩香の家に行くことが多かったのだ。
「わ~~! 素敵!素敵! 可愛い!! 広い~! そしてオシャレ~! いいなぁ~!こんな家に住めるなんて~。羨ましいわ~」
彩香の感想は、とにかく思いつくだけの褒め言葉を並べてるだけだったが、悪い気はしなかった。
「うふふふ~。幼い子供が2人も居ると、なかなか片付かなくってぇ~」
と、言いながらも手作りの焼き菓子をプレートにキレイに盛って、香り高い紅茶も一緒に出してもてなした。だいぶ大きくなった優菜ちゃんと美月ちゃん、そして桃花ちゃんは、おもちゃを引っ張り出して仲良く遊び始めた。

「へぇ~、男の子の赤ちゃんって可愛いのね~~」
「・・・彩香、元気になって良かったよぉ~!」
「うん、何とかね。新しい習い事も始めたし、当分恋はもういいかなぁ~って感じ。あ、そうそう、大貴からね、『家族が増えました』のハガキが着たわ。家族全員で幸せそ~に赤ちゃんの写真が載ってたわ」
「いや~ね、当てつけで~。 ソレ、きっと嫁が送ったのよ」
彩香は、シングルマザーの就業支援の制度を利用して、介護ヘルパーの資格を取る勉強に通ってる。将来を考えて何か資格をとってキチンとした仕事をしたほうがいいと考えたのだ。ちゃんと自立すれば、男に依存したりしないで済むのではとも思ったのだ。
「平日は子供を預けてスクールに通って、土日にレジの仕事してるの。今日はスクールがたまたま休みになったんで、やっと朋乃さん家に遊びに来れたんだけど。シングルマザーだと、保育料も安くて助かってるわ。土日はママが看てくれるわ。生活費が少なくなったけど、今はママが何とかするから頑張りなさいって!応援してくれてるの」
「え~、じゃあ、子供たちとあまり接する時間ないね~! 大丈夫なの?」
「うん。今は仕方ないわ~。生きていくためだし、子供たちも分かってくれてると信じてるけど・・」
「彩香が勉強なんてね! ホント信じられないくらい真面目になっちゃったのね~。・・・って言って・・、実は新恋人とか居たり? 何たって途切れることのない彩香だものね」
「うーん、恋とかとは違うんだけど。老人施設にね実習に行ったのよ。そこであるおじいちゃんからとっても可愛がってもらえるようになったんだけど・・・」
「彩香って、その仕事合ってるかも! 天職って感じだわね~。おじいちゃんたちから好かれそうだし~」


彩香が頑張って勉強をしていると聞くと、朋乃は勉強を中断してることがいたたまれなくなった。朋乃は、日々生活に流されてることが自己嫌悪になった。朋乃は“よしっ!”と気合を入れ、思い切って子供2人を日中実家に預け、自宅に戻って一人の時間を作って勉強に専念することにした。

朋乃の母親からは
「未だ子供が小さいのにぃ~。 勉強だの仕事だのは、もう少し子供が大きくなってからでもいいんじゃなーい」
と、文句も言われたが
「今やっておかないと、後からでは遅いのよ!」
と、説き伏せ強引に押し付けた。朋乃は昔から、自分の欲しいものには何としてでも押し通す所があった。

週に3日くらい実家に子供を預かってもらい勉強を続けた結果、とうとうフィナンシャル・プランナーの資格を習得した。子供を預けることが習慣化すると、今度はむしょうに働きたくなり、丸山部長に仕事再開をお願いした。しかし、思ったほど仕事量が多くない。全然満足できないので、別の仕事を探したほうがいいのかも・・と思うようになった。

その前に朋乃は資格を取ったことに対して自分へのご褒美をしたいと思い、彩香でも誘って美味しいものでも食べようと計画した。忙しそうな彩香だけど、誘ってみるとあっさりOKが出たので、約束の日に二人は互いの子供も引き連れ、ハッピーパークのレストランへランチを食べに入った。

このレストランは仕切りがしっかりあって個室風なので、子連れでも入りやすい。しかも座敷なのに、メニューは一般的な定食もお子様ランチもあるのだ。ただ、ランチの値段が1200円と若干高めだ。彩香には大丈夫なんだろうかと心配になった朋乃だったが
「大丈夫よ。 実は就職が決まったの! 正社員として採用されちゃった! 給料もパートの時とはぜんぜん違うし、昔だったらまずこんな豪華なランチは食べられなかったけど、今は違うのよ」
朋乃は唖然とした。
「彩香が正社員なんて!」
まさか仕事面で先を越されるとは思ってもなかったので、ショックを受けていた。でも、それを顔には出さず、負け惜しみでこう言った。
「あら! おめでとう! 良かったわね。実は朋乃もね、フィナンシャル・プランナーの認定資格試験に合格したの! お互い、おめでたいわね。お祝いの乾杯をしましょう!」
「ええ~! すごいわ!! おめでとう朋乃さん! あたしの資格は誰でも取れるけど、朋乃さんのは、なかなか取れるものじゃないじゃない! すごい、すごい」
「就職って何所? スーパーの方が正社員になったの?」
「ううん、介護ほうよ。老人施設に正式に採用されたの。今日はね、夕方から勤務だから、朋乃さんとの時間が取れたの」
「勉強が生かせて良かったじゃな~い。仕事は老人相手で大変そうだけど、がんばってね!」

「この間話したおじいちゃんのお陰なの。お金持ちで豪華個室に入っている人で、その人が、あたしをこの施設で働けるように所長に頼んだみたいなの」
「まさか! その老人と男と女の関係?」
「やぁ~~だ違うわよぉ。でもそのおじいちゃん、あたしのことスゴイお気に入りなの。渡邊さんって言うんだけど。今ね施設では、おじいちゃんとかおばあちゃんって呼んだらいけないのよ。名前で呼ばないといけないのよ。あ、渡邊さんなんだけど、今84歳でちょっとボケが入ってるの。妻にも先立たれ子供も居ないみたい。よく分からないけど、芸術家みたい。絵とか彫刻とか、短歌なんかもするみたい。変わり者で親戚も誰も面会に来ないんだって! 従業員にもあまり好かれていなくて、何だか可哀相。皆、渡邊さんの所に行くのを嫌がって、あたしに押し付けるの。あたしも最初は嫌だったけど、そんなに悪い人でもないんだけど・・」
彩香によると、渡邊さんは、彩香をモデルに絵を描いたり、短歌を詠んだりしてるのだそうだ。そして彩香のカラダを果物や花に例えたりして、ブツブツつぶやくのを不気味に思っていたが、ある日“脱いでほしい”と頼まれたのだそうだ。彩香は、直感で悪いことはしない人だと思ったので、上半身だけ裸身をさらしたそうだ。

すると渡邊さんは、涙を流しながら
「ああ・・美しい、美しい。女神よ・・」
と、手を合わせたのだという。それ以来、彩香は渡邊さんに時々裸を拝ませるようになった。その度に崇められるのだと言う。軽く身体を触れることもあるが、とても優しい触りかたをするのだという。軽く触ったり見るだけで、けして押し倒したりはしないのだという。彩香も崇められるのは悪い気はしないというが、気になるのは、給料に“特別手当”と称して数万円上乗せされてることだ。
「いいんじゃな~い。特別手当、貰っておいても。そのじいさん、野蛮なことはしないから、バイシュンとは違うだろうし。でもスゴイよね~!彩香。よくそのじいさんに裸見せたり出来るねぇ~! 朋乃だったら、絶対嫌! 気持ち悪いわぁ~」
「あたしは不思議と嫌じゃないの。こんなカラダでもとっても喜んでくれてあたしも嬉しくなるの。何なんだろうな?恋愛とは違うし。でも何故か渡邊さんを愛おしく感じるの」
「それこそ、究極の介護よ! 愛のボランティアとでも言うのかしら」

子供たちは、二人が話してると時々ちゃちゃを入れて、話が中断されることもしばしばだが、子供たちに構わずかなりキワドイ話を続けていた。おそらく意味はわからないであろう。ランチの内容には満足したが、話題の中心を彩香にさらわれてしまって、朋乃は面白くなかった。彩香は、ホントに次ぎから次へと刺激的な話題を提供してくれる。


彩香と別れて自宅に戻って、朋乃は優菜ちゃんと陽斗くんを昼寝させると、ぼんやりと考え事をしていた。
「朋乃は刺激のない毎日を送ってるよね・・。たしかに、二人の子供の寝顔を見ていると幸せよ。でも、このままでいいの?」
と、自問自答していた。そして
「何で、結婚して子供作りたいと思ったのかしら! 満足いくほどの仕事をしたり、刺激的なことを求めるのなら、結婚も子供もないほうがいい。いっそ結婚も子供もいらないと思えるような人になりたかった! ・・ああ来世はそんな風に生きてみたいわ・・」
夫はたいへん家族想いだ。子供のことをとても可愛いがる。特に優菜ちゃんとは、恋人同士のようにすら見える溺愛ぶり。休日は家族4人でよくお出かけもする。誰が見ても幸せそうなファミリーだ。

しかし、朋乃と夫は世に言うセックスレス夫婦。

「朋乃はママだけど、オンナでもある。オンナを持て余しているよね。もっとオンナとして扱われたい。さらに、ママだけど、自分の能力を持て余しているよね。もっと社会で生かされてもいいはず」
朋乃は心の奥で、何かを切望していた。

<第35話終わり、36話へ続く>

テーマ:自作恋愛連載小説 - ジャンル:小説・文学

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