咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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B A B Y  D O L L ~第33話~「不妊治療」
誰しも「待つ」のは苦手です。そんな時はどうやって過ごそう・・?
そこにその人の真価が問われる。


※この物語はフィクションです。興味のある方は、サラッと読んでみてくださいネ。


B A B Y  D O L L


~第33話~「不妊治療」


朋乃は彩香を車に乗せて、いつか丸山部長に教えてもらった“とっておきの場所”へ連れて行った。テイクアウトで買ったスターバックスのコーヒーを開けて、目の前に広がる海の景色を眺めながら会話をした。

「いい所ね! 今度大貴と一緒に来たいわ」
「ふふふっ! ここはとっておきの場所なのよ。 ・・さて、大貴と何かあったの?」
「ケンカとかじゃなくって、まあ、うまくはいってるんだけど・・。大貴、ずっと前からあたしと一緒になりたいとか言っておきながら、いっこうに進展しないのよ」
「あら、なんだ~! うまくいってんじゃん。別に悩みってほどでもないじゃん」
しかし、彩香は未だ言い足らなさそうな不安そうな顔をして言った。
「でも・・、いつまでもこれでいいのかな・・なんて不安になるのよ。いったい、ホントにあたしと結婚する気があるのかしら? いったいいつになったら・・」
「愛はゆっくり育んでいくものよ! 焦らない焦らない! 結婚結婚って相手に迫ると逆に逃げていくものなのよ~」
朋乃は、自分のことは棚に上げて、よく言うよな~なんて思っていた。自分の結婚は付き合って2ヶ月程で決まったし、今も二人目の子作りは“早く早く”と焦ってる状況だ。

「そうだよね~。あたし、ちょっと焦ってたよね。・・・んとね・・、彼ね、エッチの時ちゃんと避妊してくれるのはいいんだけど・・・、たしかに嬉しいんだけど・・、最近ね、それがね、ちょっと寂しかったり・・するの。あっ、こんなこと言ったら怒られるよね・・・」
「ちょっと、ちょっと! またできちゃった婚・・を狙ってる?」
「そ、そんな~~!! そんなつもりは・・ない・・つもりだけど。 でも、毎回キチンとするってことは・・彼はできちゃったら・・はマズいのかなぁ・・なんて考えて切なくなるの」
「前はそれでうまいこと結婚できたけど、その手は毎回使えないわよ~! でも、結局は離婚しちゃったでしょ~。やはり、ゆっくりと愛を育むってことが大事なのよ」
「男の人に“避妊して”も言いにくいけど、“避妊しないで”も言いにくいのね」
「たしかにね! でも、どうしても・・って言うんなら、二人で話し合うのね。あと、あまりお勧めしないやり方だけど屋外なんかでいきなり迫ってみるとか・・」
「・・・あの・・実はね・・・内緒の話なんだけど、前はね、そうやって美月ができちゃったの・・。何だか朋乃さんから、あたしのこと、すべて見透かされてるみたい」
彩香は顔を赤らめて下を向いていた。朋乃は、“おっと!ヤバいヤバい”と思いながら平静を装った。 そんな会話を延々としていたが、結局はゆっくりと愛を育むという模範的な回答で締めた。


数日後、ついに朋乃は不妊専門病院にて採卵の日を迎えた。内診で15個の卵胞を確認でき、静脈麻酔の全身麻酔下で行うことになった。採卵室に入ると、そこはいかにも手術室という感じだった。朋乃は緑色のベッドに仰向けになり、足を開かされ更に足を固定されると、緊張感もピークに達した。ナースから
「頭がボーッとなる注射をしますよ~」
の言葉を最後に意識が遠のいていった。

気がつくとリカバリー室のベッドで寝ていた。採卵は、あんなに緊張していたのに呆気ないくらいアッという間に終わった。1時間程ベッドで休んだ後、診察室へ呼ばれ、後処置をして、ドクターと面談となった。採卵の結果通告である。

ドクターによると、タマゴは15個採れたが、未成熟卵やグレードの低い卵もあり、使えそうなのは10個ほど。体外受精よりもダンナさんの所見を考慮して顕微授精の方を勧めると言った。それから、今周期は胚移植はしない方がいいと言われたのだ。
「タマゴも沢山出来たし、その分卵巣にかなり負担をかけたから、出来れば今回は全胚凍結をして、次の次の周期に自然周期で胚移植をした方が妊娠の確率が高いでしょう」
「・・・そうなんですか。高度生殖治療って、けして最短距離ではないんですね。わかりました。では、そうします。あと、お願いがあるんですが・・・」
朋乃は、少し上目使いでドクターの目をじーーっと見つめながら言った。
「男の子がほしいんですけど!」
「おいおいおい・・現在では、医師の手による産み分けは禁止されてるのだよ。それは残念ながら希望に沿うことは出来ないよ」
しかし、朋乃は微笑み、得意の甘ったるい声で
「ではセンセイ、よろしくお願いしまぁ~す」
と、頭を下げて診察室を後にした。確かにドクターの言う通り、現在では産み分けは倫理的な問題で禁止されている。しかし、現代の医学では産み分けは実は簡単だと言われている。精子をある特殊な薬剤にかけると、Y染色体精子とX染色体精子とに分離するので、希望する性別の精子を使えばよいだけだ。朋乃はそのことを知っていてカマをかけてみたのだ。しかも、こういった研究室に毎回捜査が入るとは考えにくい。法の目をくぐりながら実際はやってるのではないか・・などと考えたのだ。


採卵を終えた後日、朋乃は副作用で下腹部の腫れと痛みで、実家でしばらく寝込んでいた。数日後、何とか回復して社宅に戻ると、ママ友の1人が駆け寄って来た。二人目宣言を堂々とした人だ。
「えーーん、生理来ちゃった。撃沈!」
と言うと、朋乃は、内心悪いと思いながらもホッとしていた。そして、他の仲間のことがすごく気になった。朋乃と同じ病院に居た人はどうだったのだろう。朋乃は、今周期と来週期は妊娠不可能なので、早まる気持ちを抑えるに苦労した。
「色々と考えても仕方がないし!」
気持ちを他へ向けるため、朋乃はフィナンシャル・プランナーの資格習得の通信教育を申し込んで勉強を始めた。あとは、建設中のマイホームのインテリアを考えたりしながら過ごした。


あくる日、彩香から電話があった。この間の相談の続きだった。
「思い切って屋外で迫ってみたわ! でも、この場所では落ち着かないとなだめられた・・。別の日にホテルに行った時、『いつも隔たりがあるみたいで寂しいの。直接大貴を感じてみたい。今日は生理前で大丈夫な日よ・・』と言ったら『安全日なんてないんだよ。君を悲しませたくはない』と返ってきた。大事にされてるのは嬉しいんだけど・・」
「もうやめなよ彩香! 大貴の言うことはマトモだよ。そんなことばかり考えてないで、もっと趣味とか持って、何か別の楽しみを持ったほうがいいよ。そしたらあんまり考えなくなるからさぁ~。気持ちに余裕を持っていないと、結婚には至りにくいのよ」
朋乃は、実は自分に言い聞かせるように言っていたのだ。


約2ヶ月が経過して、朋乃にやっと胚移植が出来る日がやってきた。移植する前にドクターと面談があった。
「子宮に戻す胚は君の年齢では1個だけだよ。多胎を防止するためにもね」
「たしかに産婦人科学会のガイドラインではそのようになってるけど、それって法律ではないでしょ! あくまでもガイドラインであって。出来れば2個戻してほしいなぁ~」
「その通りだよ! 君はよく存知てるなぁ。そこまで言うのなら2個戻してあげよう。ただし、一番グレードのいいのを1個とちょっと良くないのを1個だよ。多胎は防ぎたいだろう?」
朋乃はそれで承諾した。朋乃は顕微授精をするにあたって非常によく勉強をしていた。高度生殖治療は、朋乃のように頭いい人にはうってつけの生殖方法なのかもしれない。再び、手術室のような所で胚移植は行われたが、今度は麻酔なしで器具やカテーテルを入れられ痛かったが、移植はアッという間に終わった。

それからは、なるべくゆったり過ごすように心がけていた。そして、あまり考えないようにするために、日中は社宅を出て実家で過ごすようにしていた。社宅のママ友たちのことを気にしたくないからだ。


それから数週間が経ち、彩香から電話があったが、涙声でかなり興奮していた。これはただならぬ状況だと察した朋乃は、彩香のもとに駆けつけ、海の見えるとっておきの場所へ連れていった。
「別れてほしいって大貴から言われた時は、まあ、仕方ない・・って思った。冷静に考えたら、こんな2人の子持ちと一緒になるなんて、簡単なことじゃないしね。でも、それが理由じゃなかったの」
「じゃあ何?」
「婚約者が居たの。でも、その婚約者は親が勝手に決めた女性らしくて、大貴は乗り気じゃなくて、その女性とは付き合ってもいなかったらしいの。でも・・でも・・・その女性に赤ちゃんができたらしくて・・・その・・・」
泣きじゃくる彩香を朋乃は抱きしめてあげた。
「それはショックよね・・」
「もう、すごいショック! あたしとは絶対に赤ちゃんができないようにしていたくせに! その女性とは!!」
「婚約していたのなら、赤ちゃんを作ってもいいんじゃない! できちゃった婚とは違うでしょう」
「朋乃さん! どっちの見方なのよーっ!」
彩香はかなり怒り口調だった。かなり感情がもつれているようだった。朋乃もそれにつられるように売り言葉に買い言葉になった。
「だいたい、彩香の考え方がオカシイわよ! 妊娠を!子供を結婚のキッカケの道具にしょうとするなんて! 大貴はそんな彩香に嫌気が差したんだわ。本能だけで生きるような女より、ちゃんとした“お嬢さん”の方を結婚相手として選んだのよ」
彩香は激しく泣いていた。朋乃も少し言い過ぎかと思ったが止められなかった。

「それからね・・・実はね、朋乃も妊娠してるの。赤ちゃんできたの!」
「えええーっ、う、うそぉ! そんなぁ・・・何で! 何であたしだけ!? こんな目に遭うの」
「朋乃はさ~、結婚しているんだから! ありうるわよ~。と~ぜんでしょっ!」
妊娠に関して、かっての朋乃が味わった“くやしい”想いを、今、彩香がしている。因果である。
「いくらケンカ中とはいえ、一応友だち同士なんだから“おめでとう”の一言ぐらいあってもいいのに・・」
と、朋乃は残念に思っていた。

<第33話終わり、34話へ続く>

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

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