咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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B A B Y  D O L L ~第31話~「シングルマザーの恋」
友だちが新しい世界を踏み出し、輝いていた・・
それなのに自分は毎日同じことの繰り返し。ココロはギスギスして冴えない。
だが、そんな友だちの影響を受けて、自分もイイ方向へ踏み出そうとしていた。


※この物語はフィクションです。興味のある方は、サラッと読んでみてくださいネ。


B A B Y  D O L L


~第31話~「シングルマザーの恋」


彩香は離婚してから、商店街の外れの中規模スーパーマーケットでパート従業員として働くようになった。まずは、レジの操作の勉強をしながら商品の出し入れ等の仕事から入った。同じパート従業員は殆どが主婦で、境遇も違うために彩香は馴染めずにいた。しかし男性従業員からは何かとよく話かけられた。その内の一人が、店長の息子で大貴という青年だった。年齢は26歳で、物腰ソフトで親しみやすく今どき風の青年で、お坊ちゃん育ちらしい雰囲気もあった。大貴は副店長という立場でもあった。パートの主婦達からも親しまれていた。
「その大貴! どうやって落としたのよ~」
朋乃が間一髪質問すると彩香が言った。
「今までパート主婦ばかりに囲まれていたけど、あたしは唯一独身で、しかも若いから~! 珍しかったのかもね」

しばらくすると、彩香はレジ係りを命じられた。しかし、操作は遅いし、ミスは繰り返すわで、お客たちの怒りを買い、すぐにレジ係りを外された。パートの主婦たちからも
「使えない女ね!」
「男性従業員にばかり色目をつかってさ!」
「あれで時給同じなんだからね。やってらんないわ~!」
「シングルマザーだからって、同情だけで雇ってもらっては困るよね!」 
彩香は早くも店内で孤立し始めた。

彩香がここまで話すと朋乃は突っ込みを入れた。
「あ~あ、またそうやって気を引くパターンね」
「気を引いてるつもりはないんだけど・・。でも今回はちょっと違うのよ」

それから思い余った彩香は、副店長である大貴に
「あたし、辞めます。この仕事向いてないみたい」
と、泣きついた。

再び朋乃は彩香の話に突っ込みを入れた。
「あははは・・・ちゃっかり大貴のところに行っちゃうわけね。相談なら他のおっちゃん従業員でも良さそうなのに~」

彩香に泣きつかれた大貴は、倉庫の奥まで連れて行かれた。すると、そこには練習用のレジが置いてあった。
「出来ないのなら、ココで出来るようになるまで練習しろ!! 誰だって最初から上手くは出来ないんだ。ただし覚えの良い人悪い人はある! アンタは悪い方なんだから、人一倍練習しないといけないんだよ。アンタは若いから物覚えはイイはずなんだけどな・・。50代のおばちゃんだって、一生懸命覚えたゾ。仕事を終えた後に残って自主的に練習してたんだゾ! アンタ今まで、『すぐ、出来な~い』って、男に泣きついてきたクチなんじゃないのか! アンタは可愛いから、それで男はコロッっといくだろう。図星だろ!! しかし、いつまでもそんな甘えは通用しないからな! アンタ、子供養ってる身だろ。ちょっとは頑張ってみろよ!!」
大貴は思ったよりも気骨のなる男性だった。彩香は声を殺しながら泣きじゃくったが、大貴は彩香を置いて出て行った。彩香は頭をガツンと殴られたような気分になり、わが身を反省した。それからは大貴の言う通り甘えを捨ててわが子の為に頑張って行こうと思い、仕事を終えた後もレジの練習に励んでいた。

4日ほど経って、いつものように倉庫で一人残ってレジの練習をしていると、背後に大貴が立っていた。
「おお! だいぶ上達したじゃないか! 速度も速くなったし。よし、そうだな~! 明日から店のレジに入ってもらおうかな」
彩香はホッとした。頑張ったことを認めてもらうのは嬉しかった。それからは大貴と打ち解けたように話をした。大貴は大学を中退して地元に戻ったが、毎日無気力に過ごしていたこと。そんな大貴を父親が経営するスーパーに雇ってくれたが、最初はやる気が無さそうに働いていたこと。当時の自分と彩香が重なり、彩香のことを放っておけなかったこと。パートの主婦や従業員たちから働く姿勢を学んだこと。皆、必死で生きていること。自分の甘ったれに気づいたこと・・などを話してくれた。

「パートのおばちゃんの中には、わが子の学費の為に働いてる人も居る。そのわが子もかっての自分みたいに、学校を中退するかもしれないのに。それでも必死で働いて・・。いたたまれなくなるよ・・」
「あたしもかって高校を中退したの。今やっと、ママの気持ちが分かった気がしたわ・・」
大貴は、そう言った彩香を背後から抱きしめた。そして積み上げられたダンボールの山の影に隠れるようにして、二人はキスを交わした。彩香は、大貴を恋愛の対象として意識してはいけないと、胸の中で気持ちを押さえてきたが、ここへ来てもう抑えられなくなってしまったのだ。

それから二人は付き合うようになった。休みの日を合わせてデートしたり、仕事を終えた後に少しだけ逢ったりもした。大貴は立場上時間の融通が利きやすかったのが強みであった。彩香は、今回は恋のエネルギーを仕事に生かすことを覚えた。大貴に褒められたいから頑張れるのだ。レジも上手く操作できるようになり、商品を傷めないように工夫してカゴに入れたり、お客さんへの気遣いも出来るようになった。“お客さんに喜んでもらいたい”という気持ちで、働くことの喜びを覚えたのだ。

彩香は興奮気味に朋乃に言った。
「大貴がね、今までの人と違うのはね・・・ふふふ・・エッチの時にね・・ちゃんと避妊してくれるの。もう嬉しくって、大事にされてる!・・って感じがするわ!」
「それは当然のことよ」
朋乃は冷静に答えた。
「彩香は今までよっぽど酷い男とばかり付き合ってきたのか、そんなことも人一倍嬉しく感じるのね」
密かに朋乃は思っていた。


「彩香と居ると男冥利につきる!」
そう大貴から直接言われたこともあるし、大貴が彩香が変えていっているとの自負があった。 それから大貴と彩香は子連れデートもよくするようになった。美月ちゃんが物怖じしない人懐っこい子で、大貴によく懐いたというのもあった。大貴も
「彩香と子供たちとで暮らしたら、楽しいだろうな~」
などと口走るようにもなっていった。

彩香は語りながら、うっとりと自分に酔っていた。そんな彩香に対して朋乃は言った。
「でも、まだ知り合って2ヶ月ちょっとでしょ? 今が一番盛り上がってる頃じゃない! ま、これからの行く末が楽しみだわ。うまく再婚できるといいねぇ~~」


そうこうしてるうちに彩香のママが帰ってきた。
「朋乃ちゃん、晩メシ食べて行かないか! 今からお好み焼きパーティするよん。どうせダンナは帰りが遅いんだろ。ダンナの分はお土産で持って帰って、チンして食べさせればいいよ」
朋乃は遠慮したが、彩香のママの強引さにはかなわず、ご馳走になることになった。彩香のママはホットプレートを出し、手早く手際よく準備を始め、鉄板にお好み焼きのたねと焼きソバを焼き始めた。フルーツや生野菜をカットしたものが周りに置いてあり、バイキング式で取れるようにもしていた。

朋乃は、このザックバランさを新鮮に感じた。もし朋乃だったら、お客をもてなす時は頑張って凝った料理を作り、気を使いすぎて疲れてしまうパターンだろう。彩香のママの気負いの無さが良いと感じていた。

お好み焼きが焼き上がる前に朋乃は授乳をしようとした。
「おっ、偉いねぇ~! おっぱいなんて! 彩香なんか、下の子はさっさとミルクにしちまったよ。 いや~~ミルクはラクよぉ! 一度飲んだらおとなしく何時間も寝てくれるし。人に子の面倒を押し付けられるしね。ま、子供置いて働かないといけなかったという事情もあるけどね」
実は朋乃も母乳にこだわらずミルクでいいのでは・・と思うのだが、どうも母乳育児の強迫観念から離れられないのだ。お好み焼きの美味しそうな匂いが漂うと、彩香のママは冷蔵庫から発泡酒を取り出した。
「ママ~、仕事はいいの?」
「今日は休むよ! 仕事より大事なものがあるだろ~! 今日はこうして楽しく盛り上がりたいよ。ウチは何にもないけど、楽しさだけはあるよ! 朋乃ちゃん、こんな彩香でも末永く仲良くしてやってね。ああ~! 今日はハッピーだな!! いつでも遊びに来いよな。ウチはいつでもウエルカムだから!」
それから、子供たちとも賑やかにワイワイ盛り上がった。朋乃も、彩香のママに会ったことはサプライズだったけど、お陰で楽しい気分になり、彩香の家を後にした。


チャイルドシートの優菜の可愛い寝顔を見つめながら、朋乃は呟いた。
「元気に生まれてきてくれただけでも幸せだったのにね・・」
しかし、いつの間にやら欲が出て来て、それだけでは満足出来ず、ムダに人と張り合ったりしてココロがギスギスしていた。その点、彩香は常に自然体で人とむやみに張り合ったり、ガツガツしていない。そんな彩香に癒される反面、会う度に新しい話題を提供してくれ、朋乃はいい意味でも刺激を受ける。

「育児で毎日同じことの繰り返し。あ~あ! 朋乃も何か新しいことを始めたいよぉ~!」
そんなことを考えながら運転し、家のドアを開けた矢先、朋乃はあることを閃いた。急いで家庭用金庫を開けて貯金通帳を見つめる。
「そうだ! 家を買おう!!」

<第31話終わり、第32話へ続く>

テーマ:自作恋愛連載小説 - ジャンル:小説・文学

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