咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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B A B Y  D O L L ~第29話~「育児から社会復帰したい焦り」
幸せなはずなのに、何をそんなに焦るのだろう

※この物語はフィクションです。興味のある方は、サラッと読んでみてくださいネ。


B A B Y  D O L L


~第29話~「育児から社会復帰したい焦り」


「朋乃ちゃん、今までの中で一番キレイだよ」
赤ちゃんを抱いてる画像に対する丸山部長の返信だった。赤ちゃん誕生で沢山の人からお祝いのメッセージを貰ったが、丸山部長の言葉が一番嬉しかった。女として最も輝いている瞬間を認めてもらえた気がしたのだ。こんなことは夫からも言われていなかった。


出産から、あっと言う間に3ヶ月が経った。朋乃はマタニティブルーも経験したし、初めての子育てで戸惑いもあったが
「彩香に出来たんだから、朋乃に出来ないわけはないっ!」
と、奮闘していた。妊娠初期の出血騒ぎの心配がウソのように、乳をよく飲む元気な子に育っていた。子供は『優菜』と命名された。夫は、想像以上によく子育てを手伝ってくれた。非常に子煩悩なパパである。子育ては大変だけど、しみじみ幸せを朋乃は感じていた。

今は子育てのために家にこもっていることが多いが、そろそろ外出も頻繁にしたいし、社会復帰も視野に入れて、自分自身の美容にも力を入れ始めた。
「ママになってもママに見えないくらい、キレイでいたい。子供を産んでもっともっと女として輝いていたいっ!」
と、朋乃は思っていた。スタイルの方は母乳育児のお陰で体重も減り、もとのスレンダーに戻ったが、何となく締まりのないカラダだと感じていたので、引き締めエクササイズなどを行うようにした。おっぱいも垂れてしまわないように、いつもブラジャーを付けてケアには気を配っていた。

子供の為を想って母乳育児に徹しているが、子供の成長の様子など、ついつい他と比べてしまったりもする。標準よりも遅れをとったりすると、とても焦ってしまっていた。子供が生まれると、新たな戦いが始まるのだ。朋乃の場合は、もともと負けず嫌いな性格に、さらに母としての強さも加わり、一段とファイトを燃やしていた。生後5ヶ月目になり
「そろそろ仕事をしたい」
と、丸山部長にメールした。在宅の仕事なので、もうそろそろ大丈夫だろうと思ったのだ。丸山部長の返信は
「では、ゆっくりのペースで始めてみようか」
だった。


仕事の打ち合わせのため、数ヶ月ぶりに朋乃は会社に出向いた。子供は実家へ預け、オシャレにも気合を入れて出陣した。

社内のロビーで高尾とばったり出会った。高尾は活き活きとしていて、心なしか以前より自信に満ち溢れた顔をしており、女っぽさも加わったような気がした。社会から退いている間に、すっかり変貌した様に朋乃は焦りを感じた。 しかし、朋乃とて女として一歩前進した姿をアピールしたかった。子供を産んで幸せであることなど、ちょっと自慢混じりで臆せずに語った。高尾はニコニコしながら朋乃の話を聞いていた。朋乃は女っぽくなった高尾を見て、ついこんなことを聞いてしまった。
「高尾、最近キレイになったよね。例の彼と結婚が近いのかしら? あ、結婚っていいよ。高尾も早くしちゃえばいいのに。仕事と両立なんか、案ずるより産むが安しよ! それから・・それとね・・・、子供は・・もっといいのよ~」
すると、高尾は一瞬伏目がちになったが、パッと顔を見上げて言った。
「実は、その彼とは別れたんです。でも彼と出会えたことに感謝しているわ。彼のお陰で私は成長できたから。だから、これからも、もっと素敵になりたいって思ってるの。 あ、そろそろ時間だわ。行かなくちゃ! じゃ~またね~!今度、子供見せてね~!」
意外な返答に朋乃は呆然としていた。高尾の凛とした姿に、朋乃は自己嫌悪になった。

だが、サッと気持ちを切り替え、戦闘的な気持ちでオフィスルームの扉を開いた。久しぶりに会った元同僚たちから“オメデトウ・コール”が続いた。
「わぁ~! 朋乃さんって、子持ちに見えないね~! すご~い、スタイルも保ってるし~~」
「上岡課長と朋乃さんの赤ちゃんだから、さぞかし美形でしょうね~! 今度見てみたいわぁ~!」
同僚の言葉は社交辞令であること、朋乃にも解っていた。


数日後、朋乃は発注された仕事を、納期よりもかなり早く仕上げて、再び会社を訪れた。今度は子連れであった。仕事場で嫌がられるだろうと思ったのだが
「ちょっとぐらいならイイじゃない!」
自分の子供を見せたくてしょうがなかったのだ。

ロビーで綾さんにバッタリ会った。
「すみません。今日は預けるアテがなくて、連れてきてしまいました」
朋乃は言い訳を言った。綾さんはベビーカーの子供を抱き上げてあやした。その扱いは手馴れていて、さすが子持ちだと思った。
「わぁ~! かっわいい~っ!! うははっ、何だか私も子供欲しくなっちゃったなぁ~! もう一人作ろうかしらん」
いつものようにテンションが高い。しかし、今の綾さんの発言が冗談に思えなかったのは気のせいかしらと、朋乃は思ったのだ。
「高尾さんが何所にいるのか、知らないかしら?」
朋乃は、何としてでも高尾に自分の赤ちゃんを見せたかったのだ。
「ああ~、高尾ちゃんはね、昨日からイタリアに出張に行ってるのよ~。高尾ちゃんも頑張ってるよ。もうバリバリよぉ~」
朋乃は愕然とした。朋乃は、どうしてそんなに高尾のことが気になるのか自分でもよく分からなかった。今、自分が幸せなら、他人のことなど気にならないハズなのにとも思った。

オフィスルームへ向かう途中で、今度は元同僚と出会った。同僚は朋乃の赤ちゃんに向かって“可愛い、可愛い”と連呼していた。そして、同僚は言った。
「昔はね、子供なんか好きじゃなかったのに、自分に赤ちゃんが出来ると、他所の子も可愛いく思えるのよね~! 不思議だわ。あはっ、申し遅れました。今、妊娠5ヶ月目なの。仕事はギリギリまでするつもりだし、育児休暇も取るつもりよ。子供が出来ても仕事は続けたいしね。前に比べて妊娠・出産しても働きやすくなったし、育休を取る人も増えたわね~。これも城崎さん(綾さん)と高尾さんのお陰なの~! 皆、一目置いてるわ」
その話を聞いて、またもや朋乃は愕然とした。そしてむしょうに腹が立ってきた。怒りに震わせながらオフィスルームを扉を開けたが、社内の人たちには満面の笑顔を振り撒き挨拶をした。だが、急に優菜ちゃんがけたましく泣き出してしまった。社内の人から“赤ちゃん、可愛い”と言ってもらうヒマもなく、朋乃と丸山部長は隣の打ち合わせルームへ逃げ込んだ。

丸山部長があやすと、段々とおとなしくなり泣き止んでくれた。さすが3人の子のパパだと関心した。朋乃はバッグから書類を取り出して、丸山部長に渡した。このときも授乳で大きくなった胸を強調するように意識した。朋乃は丸山部長の前ではママではなくオンナでいたいのだ。
「次の仕事はないのかしら?」
「朋乃チャン、子育てもあるだろうし、ちょっとゆっくり行こうよ」
「朋乃は全然大丈夫よ。バンバン仕事振ってくださいな。それから、1つ物申すわ! 妊娠しても辞めないで働けるような環境に変わったの? 育児休暇も取る人が増えたらしいじゃないの! 朋乃が辞めて休んでる1年半くらいの間で、こんなに環境って変わるもんなの!」
「城崎君たちが頑張ってくれたんだよ。なので、私も後押しを頑張ったよ」
朋乃は、綾さんが言ってたことは頭っから無理だと決め付けていたが、本当に実行したなんて夢にも思っていなかったのだ。
「でも、朋乃の妊娠がキッカケになってるじゃないの! 肝心の朋乃が育休を取れないでいるなんて、面白くないわ! ホントは辞めたくなかったのに~」
「私はあの時、散々引き止めたゾ。でも、朋乃チャン、聞かなかったじゃない。もう少し待っていればあやかれたのに」
「まあ・・、そうなんだけど・・。だってあの時は、流産しそうで精神的にかなり参っていたのよね。あ~あ、くやしいっ! ・・でも、在宅の仕事は赤ちゃんの顔色を見ながら出来るから、いい部分もあるわ。自分も疲れたら気兼ねなく休めるしね。子供を預けて仕事なんて、子供が可哀想じゃん。小さいうちは傍に居てあげたほうがいいと思うわ」
「そうそう、いい風に考えたらいいんだよ」
朋乃は、負け惜しみでかなり強気に言い放った。子供を産んでから、自分でもかなり気が強くなったと思っていた。


会社を出ると、久しぶりに彩香に会いたくなった。妊娠中も何度かは会ってはいたが、出産後に会うのは初めてである。朋乃は自分の子供の画像付きのメールを彩香に送信した。しばらくすると彩香から返信が来た。
「ぜひぜひ(ハートマーク) でも、家引越したのよ。○○町の市営住宅の○号よ。実はね、驚かないでね。離婚したんだ~!」

「ど、どういうことよ! いったいあの夫婦に何が起こったのよ~。真相を確かめなければ!」
朋乃は急いで車を走らせた。

<第29話終わり、30話へ続く>

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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