咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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【短編読みきり小説】 スクエア 
彼女が居るとわかっていながらも付き合い始めた。
すごく好きだから。
この気持ちを抑えて他の人を好きになるなんてできないよ。
気持ちの抑え方なんて、28年間生きていてもわからないよ。



スクエア


ビルとビルの隙間、50センチ程の隙間から見上げた四角い宇宙(そら)。ネオンで明るいけど、まばらに星空だった。50センチの隙間で、あたしとチーフは愛し合う。ひんやりとした壁にもたれ、ディープに口づけを交わす。ちょっと背中が痛い。シャツのボタンを外され、片手でスカートのファスナーに手をかける。

「それ以上はダ、ダメ・・」

一瞬、チーフの手が止まる。
「どっか、ゆっくりできる部屋へ行こうか?」
「あ、いや・・、止めないで。ここがいい」
「オマエも好きだよな!」
チーフは、やや冷ややかに言い放ちスカートを一気に巻き上げた。左の壁と右の壁。あたしは両手で支えて受け入れる。今、通りがかりの人に見られたような気がした。

スリルとかじゃないのだ。こんな特殊なコトをしないと、チーフから愛してもらえない気がする。ただそれだけだ。


チーフは広告代理店の制作部のチーフディレクター。そして、あたしはそこの部署で事務をしている。あたしはチーフに憧れて、彼女が居るとわかっていながらも付き合い始めた。すごく好きだから、この気持ちを止められなかったのだ。この気持ちを抑えて、他の人を好きになることなんて出来なかった。気持ちの抑え方なんて、28年間生きていてもわからない。

もっと愛されたい。キレイになりたい。あたしは太らないようにダイエット、がんばっている。サプリメントも美容液も取り寄せて、DVDを見ながらシェイプする。自分がこんなに努力家だったとは知らなかった。

同じ事務の先輩の紗江にはムカつく! まあ、あたしがダイエットをしてるのを知らないからだろけど、目の前で多量のお菓子をパクつく。ウチの部署は外部からのお土産のお菓子が多い。残業の多い制作スタッフからは有難がられているが、何故、残業をしない紗江が一番食べるのか! だからブクブク太るのだ。
「ダイエットしなきゃあ」 
って戯言、やる気がないなら、呟かないでほしい。
「彼氏がほしい」
って、本気で思うなら死にものぐるいで努力しないとね。今のままでは無理。美少年タレントで妄想だけしてるのがオチだわ。

ああ、イライラする。紗江を見てるとイライラする。紗江、けして悪い人じゃない。むしろイイ人だ。欲望のまんま、ありのまんま生きれるなんて・・・。あたし、紗江が羨ましいのかしら? まさか!!?


今夜はチーフがあたしの部屋に来る予定だったのにキャンセルになった。ちょっとがんばって凝ったギリシャ料理でもてなそうと思ったのに。チーフが今手がけてる仕事は、地中海をイメージした店のプロデュースだ。ちょっと意識してビックリさせようと思ったのに。

休憩室で紙コップのコーヒーを飲みながら溜息をついていると、制作スタッフの真琴が隣に座ってきた。
「実は今度、結婚することになったんだ~」
いきなり真琴は核心から入ってきた。
「ええっ! 真琴、結婚には興味無い、しないっ!・・って言ってたじゃない?」
真琴という人がどんな人かと言うと、“よく分からない人”だ。あたしのボキャブラリーが無くてどう説明していいのか分からないが、一言で言うと“不思議ちゃんキャラ”という感じだ。すごく結婚が似合わないイメージの人だ。恋愛も自由主義で、彼氏を一人に絞れない人でもあった。
「いやいやいや~、それがですねぇ~、ケッコン、面白ろそうだな~と思っちゃってね。相手はフリーの三枝ディレクターでして、めちゃくちゃ女たらしで有名だったでしょ。何で~って思ったんだけど」

あたしは真琴と三枝ディレクターのいきさつを知っていた。三枝ディレクターが女性関係を整理し、真琴に夢中になり、さらに振り回されてるとウワサになっていた。

「よくわかんない」

その一言につきる。あの三枝ディレクターを夢中にさせるほど、真琴には計り知れない魅力があるのだ。真琴は、けして美人ではない。だが、生命力に溢れていて、“いつも全身全霊”といった感じだ。ただ、かなりの変わり者・・いや、クセ者といった感じでもある。個性的だけど、よく思っていない人も多いだろう。

「ま、ケッコンってさ、男の独占欲のためにするもんなのかね~!」
真琴はそう言い放って去っていった。あたしはその言葉に非常に不快になった。だが、あたしは真琴をキライだと思いながらも、どこか意識してあの“不思議ちゃん感覚”を真似るようにしていたのかもしれない。クリエイティブな人種を弾きつけるには“普通とは違う感性”だと確信していたからだ。

「資料室に居ます」
あたしはチーフにメールを送った。数分後、チーフが入室すると自らドアの鍵をかけた。
「そういうことなんだろう」
本棚に押し付けられて激しく口づけを交わした。床には沢山のダンボール箱と資料が無造作に散乱していた。あたしは、とっさに窓のブラインドを閉めなきゃ・・と思ったが既に遅し、あたしは受け入れ態勢になってしまっていた。もう、止めることはできない。

「あたしだけの・・あなたでいてほしい・・・」

本当はチーフの顔を見ながら、深い所で繋がり愛し合いたかったのに、ふと見上げた時に目に飛び込んだのは四角い空。窓の向こうの空の蒼すぎる蒼さに涙がこぼれた。



それから1年が経過した。
今、あたしの隣りにはこうちゃんが居る。申し遅れました。あたしは半年前に会社を辞め、前居た広告代理店の下請けの小さな会社で働いている。そこの従業員のこうちゃんと気が合って付き合い始めた。こうちゃんは13才年上でバツイチ。ちょっとオッサンぽいけど、優しくて料理が上手で、あたしはあっと言う間に5キロ太ってしまった。

チーフはあれからあっさりと本命の彼女と結婚した。チーフの奥さんに会ってみたが、思ったよりも大人しくて地味な“普通感覚の女性”だった。制作スタッフと共にチーフの家庭におじゃましたこともあった。誰もが“ハイセンスなインテリアのお宅”を想像していたのに、本当に“普通の家庭”って感じで全然オシャレでなかったのには誰もが拍子抜けしたものだった。

しかし、仕事ではセンスを発揮していた。チーフは、きっと家庭ではアンチセンスで寛いで、バランスを取るタイプなのだろう。一方で、三枝ディレクターの方は仕事でも私生活でもエキセントリックでいたいタイプのようだ。

チーフの結婚が決まった時に言われたことは

「結婚後も付き合うか?」
「オマエのような刺激的なオンナは居ない。別れるのは惜しい」


あたしは、チーフのあまりにも明確すぎる役割分担さに一気に醒めてしまった。家庭用と刺激用?・・・で、あたしは刺激用ということになってるが、とんでもない! あたしも本当はどちらかと言うと奥さん寄りのオンナなのだ。愛が欲しくて今まで演じてきた。刺激的かつ自由なオンナで魅了してたつもりだった。もしかしたら奪略さえできるかもしれないと夢みていた。

「バカだった・・」

規定に捉われない恋のつもりが、実は自らガチガチに枠にはめ込んでいたのだった。けど、背伸びしてムリしてた恋も今はいい経験だったと思う。今は刺激よりも偽らない自分でいさせてくれる関係が嬉しい。

<完>
※このストーリーはフィクションです

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

背伸びは必要。
というか
背伸びしたからこそ
等身大の自分というものを
見付けられるのかもしれない。
無理したり、努力したりしてこそ
自分の分を知り、素を知る。

恋愛には
人の数だけ、種類も質もあるし
何が良いとは一概には言えないんですよね。
でも、本当のいい女っていうのは
全てのものを肥しにする力があると思うんですが
どうでしょうか??

自分で自分を追い込み
枠にはまろうとすると
セツナイっすよね~。
そこを抜けだして、1つ突き抜けた女性っつ~のは
すごくキレイなんで、それも大事な経験なんっすけど(笑)
【2009/08/04 16:07】 URL | あっち #- [ 編集]


●あっちへ
恋は人を成長させるますよね。
背伸びしたり、傷ついたり。
そうなんです。そうやって自分を知ります。
なさけない自分も、格好悪い自分も、いやほど思い知る。
そして、それを経て強くもなれる。

いい女は、全てのものを肥やしにできます!
フラれる→人の気持ちがわかるようになった、思いやりを持てるようになった
などなど。
ガチガチに枠にはまる経験があるからこそ、限界を知った時
スッコーンと! 突き抜けられますね☆
突き抜けてる女性ってキレイですし、カッコイイです。うんうん!
【2009/08/06 00:10】 URL | sakuya #- [ 編集]


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