咲ク夜 ~妄想ライブラリー~
恋愛小説(連載・短編)他。妄想をカタチに・・危険な願望・・ フィクションの中にこそ真実があり!?
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更新情報 『大奥★社内恋愛』 第4話UP!(最終章)
さて、いよいよラストです!!


イケメンと関わる女たちの行方は・・?
大奥総取締役の真砂子は・・?
怒涛の最終章です。


大奥★社内恋愛 4 (最終章)
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更新情報 『大奥★社内恋愛』 第3話UP!
ストライクゾーンの広いオトコ、それは罪つくりである。
社内の複数の女性と関係を持ち
その、女たちのそれぞれの想いとは・・・


大奥★社内恋愛 3

実は~、まだ終わりません!
第4話で完結。次回が最終回です!


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更新情報 『大奥★社内恋愛』 第2話UP!
女ばかりの会社の
殿(イケメン)をめぐって、大奥(社内)は複雑に混戦模様。
しかし、ポジションも決まりつつある?
へビィな展開へ

大奥★社内恋愛 2

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更新情報 『大奥★社内恋愛』 新連載スタート!
もしも、女ばかりの会社に、目の覚めるようなイケメンが入社して来たら・・・
さあ、大変です!!
痛快、ラブストーリー。

コチラをクリック↓
大奥★社内恋愛

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【短期連載小説】 大奥★社内恋愛 4(最終章)
イケメンと関わる女たちの行方は・・?
大奥総取締役の真砂子は・・?
怒涛の最終章です。


大奥★社内恋愛 4 (最終章)

※このストーリーはフィクションです


沙耶が真砂子に口汚く怒りをぶつけているところへ、突如、沙耶の携帯が鳴った。
「あらぁ~! もしもし。おつかれさまですぅ。うん、うん。がんばってるわよぉ。 えっ、風邪? あらぁ~、それは大変だわぁ。ムリしないほうがいいわぁ・・・」
沙耶の口調が180度変わり、1オクターブ高いぶりっ子声になった。その変貌ぶりに、真砂子は拍子抜けし椅子から転げ落ちそうになった。電話の主は龍星からだと分かったが、ウワサには聞いていた“龍星の前ではガラッと態度が変わる”を目の当たりにし、改めてその芸当に驚いていた。
「編集長、龍星、風邪みたいなの。早退させてあげてもいいかしら?」
呆気に取られていた真砂子は、つい首を縦にふってしまった。
「早退の申し出は、本人が直接言ってくるのが常識じゃない。小学生じゃあるまいし。保護者気取りするなんて・・」
少しムッとして思っていたが、再度、沙耶にミスの件を念押しし、お互いデスクへ戻っていった。

その後、真砂子は部長から呼ばれ、沙耶のミスの件や“最近、連帯感に欠けている”などと、クドクドとお説教をされた。これが中間管理職の現状なのだ。

午後10時を回り、社内の半数以上が帰宅した中で、真砂子はどうでもいいことで費やした時間の為に遅れた仕事を取り戻すようにこなしていた。
「編集長、良かったらコレ、ど~ぞ! 疲れた時は甘いモノが一番よ!」
目の前で美夏が新製品のチョコレートを、真砂子に差し出していた。
「あっ、ありがとう~」
真砂子は目をうるませて有難く受け取った。空気が読めないと言われている美夏からの気遣いが、心身ともに疲れ気味の真砂子の心に深く染み渡った。気持ちが和んだところで、真砂子は普段は言わないようなウワサ話的な会話へ走っていた。
「あの、沙耶の変貌ぶりを初めて目の当たりにしたけど、す、すごいわね。ある意味関心しちゃったわ。ねえ、あなたも好きな男性の前では変わるものなの?」
「あ~はっはははは~! 編集長って意外とオボコなんですねっ。当たり前じゃなぁ~い! 変わるわよ、男の前では~! まっ、沙耶ほど露骨ではないけど、大なり小なり誰でもあるわよ~。それで、ヤツらはいい気分になるんだからぁ。結婚にこぎつけるまでは騙すかしらね。ぶっふふふ・・」
「へぇぇぇ・・そ、そうなの? 騙す?・・の?」
「あら~! 男だって、騙すじゃない! お互い様よ。調子のいいこと言っちゃってさ~!」
真砂子は、男と女のドロドロとした駆け引きみたいなコトに、内心身震いをおこしていた。美夏の言う通り、“自分はオボコ”なんだと改めて思っていた。
「でもね、編集長、ひょっとしたら沙耶のは演技じゃなかったりして。たまに居るんですよ。好きな男の前ではボーッとなって、無口になって相手の言いなりになっちゃうような人。普段気が強い子ほど、そのギャップが激しかったりするかも」
真砂子は関心していた。
「“天然”ぽい子が案外と的を得たことを言うんだなぁ」

しばらくの間、真砂子は集中して仕事をこなしていると、クライアントから緊急の連絡が入った。大至急手直しをしてほしいとのことだった。それは沙耶の担当の箇所だったので、沙耶の携帯を鳴らすが、いっこうに出なかった。自宅に電話しても不在だった。そして、真砂子は立ち上がり、ある場所へ駆けつけた。それは龍星のアパートだった。

案の定、アパートの駐車場に沙耶の姿があった。だが、別の女性と口論の真っ最中だった。その女性こそが、龍星の二股の相手なのだろうと真砂子は思ったが、今は緊急事態な為、二人の間に突入していった。
「沙耶、大至急会社に戻って手直しして!」
そして、もう一人の女性にも言った。
「龍星の病気見舞いに来たんでしょ。あなた、行って看病してあげて!」
それを聞いた沙耶は立腹し、真砂子に掴みかかろうとしていた。
「やることはキチンとやってから、恋愛ごっこはして頂戴!」
真砂子はいつになく強い口調で言うと、沙耶はわんわん泣き出し、しぶしぶ車に乗り会社の方へ行った。
「沙耶、女だからって、すぐに泣くのは止めてくれる!」
そのセリフを沙耶は聞いてはいなかった。もう一人の女性は呆然として、真砂子に軽く会釈をして龍星の部屋へ消えて行った。

一連の騒動が一段落し、社内は真砂子と沙耶の二人だけになった。
「もう、龍星と別れる!!」
そう沙耶が言うと、真砂子は引きとめようとしたが
「龍星に振り回されるのは、もう懲り懲りよ。さっき、別れのメールを送ったわ!」
沙耶は、龍星からのメールの内容を片っ端から消していっていた。
「それで・・本当に・・いいの?」
真砂子がたずねると
「いいんです!」
沙耶はキッパリと答えた。


数日後、再び事件が起こった。今度は何と! 龍星が突然会社を辞めることになったのだ。けして“円満退社”ではなかった。部長とのケンカが原因だった。社内の女性たちは龍星に同情的で、一部の人で内密に送別会を開いた。だが、真砂子も沙耶もそれには参加しなかった。

数週間後、今度は、龍星と沙耶がヨリを戻したことを聞かされた。龍星が二股をかけていた女性の方が“身を引いた”ということだった。龍星は、沙耶と別れてから、沙耶の存在の大きさに気付き、自分のしてしまった行為に後悔ばかりしていたというのだ。

だが、龍星は現在無職で就職活動もうまく行ってない様子だった。そんな龍星を沙耶は生活の面から支えていた。

龍星の居なくなった会社は火が消えたように寂しくなり、また以前の“女ばかりの会社”に戻った。だが、それはある意味平和で仕事もよくはかどり、真砂子はかえって安堵していた。

そんな中、香奈もが辞めることになった。
「龍星の後追いなんかじゃないわよ! ・・ってか、最近龍星に会ってないもんね~。龍星、バンドも辞めちゃったし、なんか~、つまんない男になっちゃったーって感じ。私は、もっと自分を高められる人と交流がしたいのよね! あ、そうそう、ココ辞めたらね、東京に行くの! ずっと前からね、東京のデザイン事務所で働きたかったんだ!」
「あら、香奈なら大丈夫よ! 東京でも通用しそうだわ。うん、がんばってね!!」
真砂子は香奈のチャレンジ精神を心から応援し、門出を見送った。


それから2年の月日が経った。

真砂子は、相変わらず女ばかりの会社で編集長として奔走していた。そして、沙耶は1年前に結婚退職をしていた。沙耶は、ついに龍星と結婚ができたのである。

ある日、真砂子は外出先の途中で偶然、龍星に会った。実は龍星の方から声をかけられたのだが、すぐには龍星だと気づかなかったのだ。なぜなら
「龍星って、もっとイケメンだったはずじゃなかったけ?」
と、思ったからだ。目の前の男性は、薄くなった髪に寝起きのままのようなセットしてない髪型で、やつれたような顔だし、すっかりオーラもフェロモンもなくなってしまっていたのだ。

龍星は、公園で1歳になった自分の娘と遊んでいた。
「真砂子さん、結婚しないんすか?」
「あっははは~! 相変わらず仕事に追われていて~。もう、全然そんな予定もないわね」
「そうなんすか。でも、子供っていいよ。ホント。こんなに可愛いものだとは思わなかったよ」
娘を抱き上げる龍星を見て、真砂子は苦笑いをしていた。世の中には、パパになってもオーラもフェロモンも保ったままの男性も居るが、今の龍星はすっかり削げ落ちてしまっていた。真砂子は、今までくすぶっていた龍星への想いもすっかり醒めてしまった。まるで夢から醒めたような感覚だった。
「龍星、結婚して・・今、幸せ?」
真砂子は、純粋に疑問に思い聞いてみたのだ。
「うん。まあ、そうだね・・」
それから少し間があって

「結婚って・・・、本当に好きな人とは、できないものかもしれないね」

その言葉に、一瞬だけ、生暖かい風が真砂子の頬を伝った。
「でも、俺、今幸せだから~」
龍星の言葉を遮るように遠くから、沙耶の呼び声がしてきた。
「あら~、編集長、久しぶり!!」
沙耶は仕事をしていた時代の“キツさ”が取れて、穏やかな柔和な顔立ちになっていた。そして、幸せオーラが漂っていた。それから、子供の面倒は龍星に任せて、真砂子と沙耶は二人っきりで公園のベンチで話を始めた。
「今だから言うわ。龍星ね、最初は編集長のことが好きだったの。だって、龍星からしてみたら、編集長ってバリバリのストライクゾーンなんだもん。年上好きだし、私と違って優しくて知的で穏やかだし、美人だし。・・だから、編集長には絶対に負けたくなかったの! 龍星の携帯もチェックしてて、私以外とメールのやり取りもさせないようにしたし。今思えば・・ホントに必死だったわ。でも、やっと夢が叶って結婚できた!」
真砂子は、沙耶のことが“長距離レーサー”のように見えた。恋とは“過酷なレース”でもあるのだ。時にライバルを蹴落としたり、自身も傷ついたりしながら走り抜かねばならないのだ。そして競争に勝った者だけが甘美に酔えるのだ。そんな弱肉強食のような男と女の世界に、真砂子は身震いがしていた。
「私は香奈みたいに才能もないし、すごく結婚がしたかったのかも。だから良かったの」
真砂子は、沙耶に龍星のことを聞いてみた。
「龍星、今、普通の製造会社で働いているの。デザイン業界はお金にならないって、私たちのためにね。それでも生活は大変で・・。小さなアパートでつつましく暮らしてるわ。龍星、前みたいにカッコ良く無くなった・・って思ってるでしょ!・・・いいのよ。むしろその方がいいの。ヘンにモテて女性関係で悩むのはもう懲り懲りだもん」
だが、真砂子は思っていた。
「そういう考えもあるのか~。でも、もし自分だったら、いつまでも素敵で輝いている男性で居てほしいなぁ・・って思うけどなぁ」
そして、真砂子は龍星と沙耶を背にして、背筋をピンと伸ばしハイヒールを鳴らし、仕事の現場へと戻っていった。


仕事の忙しさが一段落ついたある日の午後の編集室、女同士で雑談に花を咲かせていた。
「ウチの息子ね、芸能事務所のオーディションに合格したんだよ~! 私もステージママとしてがんばんなきゃ~うふふふ」
早苗おかあさんが言うと、皆はその息子の画像を見せるよう促した。お世辞にもイケメンとは言えないのだが
「うん、爽やかな感じね」「背が高いのね・・」
などと言ってその場を誤魔化した。早苗おかあさんは、龍星のことはすっかり過去のことのようで、今は息子可愛いがりに奔走していた。

「美夏、また振られたよぉ~! えーん」
「あらら・・、例の彼と結婚寸前って言ってたのに?」
「そうなの。ホラ、美夏、仕事が忙しいじゃない。それが不満みたいだったの」
「そんな男、別れて正解よ。今どき、仕事に理解のない男なんてダメ!」
「そうそう、彼女依存男は絶対にダメね! 結婚して苦労するわよ~」

「美夏が10年後も、独り身でこの会社に居ることに・・賭けるわ!」
真砂子が言うと、皆はドドッと笑った。
「ちょ~っとぉ! ひっど~い!!」
美夏がボケると、ますます笑いを誘った。

「ところで編集長、部長とは・・どんな感じなんですか?」
唐突な質問に少し顔を赤らめていた。
「あ、あの~ねぇ・・、皆が想像しているようなことは・・全く・・ナイから~! ホントにね、時々ただ食事をするだけなのよ」
実は、1年前に嫌われ者の部長が移動になり、新しい部長が赴任してきたのだ。新しい部長は50代前半で既婚だが、格好良くてダンディーで優しく、社内の女性たちに慕われていた。真砂子の仕事ぶりも認めてくれていた。真砂子は、以前よりも仕事を楽しいと感じるようになっていた。
「その・・、私、不倫とか・・好きじゃないから! うん、うん」
「ふーん・・」
「ふーん・・」
周りの女性たちは、含むような相槌をしていた。

以前、沙耶から
「いつまでこの会社に居るつもり?」
と、聞かれたが
「この“大奥”が結構合っており、心地良い」
と、真砂子は感じていたのだった。

<完>

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【短期連載小説】 大奥★社内恋愛 3
ストライクゾーンの広いオトコ、それは罪つくりである。
社内の複数の女性と関係を持ち
その、女たちのそれぞれの想いとは・・・


※登場人物も増えて複雑化してきたので、ストーリーの終わりの一番下に、登場人物紹介コーナーを設けました。

大奥★社内恋愛 3

※このストーリーはフィクションです


早苗おかあさんらしくない、あまりの衝撃の発言に真砂子は言葉を失っていた。
「あ、大丈夫よ。子供はもう堕ろしたから。女なら、好きな人の子供は産んでみたいものだけど、さすがにイケナイわよね。だからね・・」
「あっ、あの~、カラダの方は、大丈夫ですか?」
妊娠も出産もしたことがない真砂子は、どう返してよいか分からず、ただただ、早苗おかあさんのカラダの心配をすることで精一杯だったのだ。
「中絶なんて、出産にくらべたらどーってことないのよ。手術の次の日から普通に家事をしていたし、まあ、大事をとって会社の方は休ませて頂きましたけど・・。でも、後から精神的に辛くなってきてね。子供を失った喪失感とかがワーっと来て・・。ごめんなさい。それで沢山休んでしまいました。いい年して情けないですね。ホントに・・」
早苗おかあさんが長い間会社を休んだ真相を知り、真砂子は納得していた。しかし、今だ信じられない思いだった。
「もう42だからさ、妊娠なんてしないと思っていたのよ。でも、油断しちゃったわね。あはは・・」
真砂子は、早苗おかあさんの白くて柔らかそうな肌を妙に艶かしい気持ちで眺めていた。早苗おかあさんの方もいつになく饒舌で、真砂子には“別に話さなくてもいいことを、わざわざ話している”ような気がしたのだ。
「ひょっとしてこれは、ちょっと自慢なの? 龍星と関係を持ったこととか・・実は話したくて仕方ないとか・・」
と、思い真砂子はある提案をした。
「ちょっと時間が早いけど、今から一緒にランチに行きませんか?」
真砂子は編集者としての“記者根性”がムクムクと沸き上がってきたのだ。実際の仕事は、タウン情報誌のお店の情報の記事を書くばかりで、コラムを書くことは殆どないのだが、目の前の42歳のごく普通の子持ちの主婦がどうして“婚外恋愛”に走るのか、非常に興味を持ったのだ。それから龍星と早苗おかあさんが、どういうキッカケで男女の関係になったのかも知りたいところだった。キワドイ話は、社外でした方がいいと判断したのだ。

真砂子のイチオシのオシャレなイタリアンレストランに二人は入った。落ち着いた店内なので、ゆっくり話が出来そうな雰囲気である。早苗おかあさんは、こんなオシャレな店は初めてだとソワソワしていた。まず、真砂子から切り出した。
「どういうキッカケで・・そういう関係になったのですか?」
「ふふふ・・、私が龍星とだなんて・・意外でしょ~! 私と龍星が二人っきりで会話してても、皆、疑いもしないのよね~。ま、そうでしょうけどね。そうそう、知ってました? 龍星ってね、年上女性が好みなのよ! マザコンでもありシスコンでもあるかしら。ホラ、龍星の一応本命の彼女でもある沙耶だって一応年上でしょ。梨奈だってそうだったわね。でもね、沙耶よりも梨奈よりも、実は私が一番初めに龍星と付き合ったんですよ」
真砂子は龍星が“年上女性好み”と知って、もしかしたら自分も“標的”だったのかとしみじみ思い返していた。だから、龍星から声をかけられたし、一時期はメールで繋がっていたのだと納得したのだ。
「龍星、独り暮らしでしょ。食事が困るってよく言ってたわ。だから、“私が夕ご飯作りに行くよ”って言ったら本当に喜んだわ。最初はもちろん、男女を意識していなかったわよ。私も、いかにもおかあさんキャラだしね」

「でも、旦那さんや子供も居るのに、よく家を出れたわね」
「ウチね~、旦那は毎日帰りは遅いし、出張も多いの。子供たちだって二人とも塾で帰りは夜遅いわ。しかも最近は反抗期だし。寂しい主婦なのよ。だから、龍星の為に作ってあげるとね、ホントに喜ばれてね~! それが私の喜びだし、いつしか生きがいになってたわ」
「胃袋で掴んだってわけね。・・で、それがいつしか男女関係に発展していったのかしら?」
「そうね。私が料理している姿が格好イイって! 龍星がそう言って後ろから抱きしめられたの。もう、びっくりよ。こんな私でいいの!って感じよ。太ってるし、このカラダ見たら幻滅だろうし。でも龍星、太めの女性が好きなんだって言ったわ。“自信持ってもいい”とまで言われたわ。私、夢を見てるかと思ったわ。10年以上ぶりにオンナとして扱われたし、ああ~、オンナとして生き返ってゆく~って感じで・・」
真砂子は複雑な思いで聞いていた。真砂子とて仕事に追われる毎日で、独り身だし空虚感に襲われることもある。しかし、旦那も子供も居て幸せな奥さんだと思ってた人の、影の部分を垣間見た気がしたのだ。

「ある日、龍星の部屋で抱き合ってるところを龍星の元彼女に見られたの。もう、大変な騒ぎになって。それをキッカケに元彼女と別れることになったわ。元彼女に言わせるとね、浮気したことが嫌なんじゃなくて、私のようなデブなオバサンと抱き合っていたことがショックらしかったの。元彼女はモデルのようなキレイな人だったわよ。“キ~モ~い~!”って叫んでプッツンよ」
「前に梨奈が龍星がフリーになったって言い振らしたのは、このことだったのね」
「そうよ。龍星が元彼女と別れたのは、実は私がキッカケだったのよ」
「しかし、その後、沙耶と付き合うようになったよね。それは何故・・・」
「そうなのよ。私とイイ感じだったのに、ジャマが入ったのよ」
真砂子はそこが一番知りたいところだと思い、しっかり聞きの体制に入っていた。

「実は、私も沙耶のことは詳しく分からないんだ~。ただ、沙耶が押しかけたのは事実よ。龍星がフリーと分かったとたん、サッと近づいてきたもの。あの人、負けず嫌いだからね。女の子っぽく演技して落としたのでしょう。元彼女のトラウマからか、龍星から“もう来ないで”とも言われてショックだったわ」
「でも、また戻ってきたのよね?」
「そうなの。龍星、私と居るのが一番癒されるって言って復活したわ。沙耶だと疲れるんじゃないかしら。龍星ね、やっぱり私のカラダがいいって! ふふふ。沙耶ってガリガリで胸も無いし魅力無いじゃん。まあ、エッチでめちゃくちゃ尽くすだろうから、無視は出来ないのでしょうけど」
沙耶に対するオンナとしての対抗意識に真砂子は身震いがしていた。しかし、真砂子は
「沙耶が相手の時は、“俺は太めは苦手だ。細いのが好きだ”なんて言ってるかもしれないわ」
と、密かに思っていたのだ。
「その後、頻繁に逢瀬していたら、妊娠しちゃったのよ」
「それ、龍星は知ってるの?」
「ううん。知らせないわよ。迷惑がかかるようなことはしたくないもの」
「でも、早苗おかあさん一人の問題じゃないじゃない?」
「知られると、もう逢ってくれなくなるかもしれないじゃない。そんなのはイヤよ」
真砂子は早苗おかあさんと呼ぶことに違和感を覚え始めた。何故なら、“おかあさん”でなく一人の女性として見えてしまうようになったからだ。

「私、分かっているのよ。龍星は私の“カラダ”と“ご飯”が目当てであること。“生”でやらせてくれるから・・いいのかもしれない。それが自分の価値なのよ。でも、もうヘマはしないわよ。避妊リングを入れたからね。ふふふ、これは経産婦の特権ね。・・・愚かな女と思ってるでしょ? でも、この気持ち、美人で頭も良くて男性から“引く手あまた”の編集長には分からないわよね。編集長なら、いつも男性から大事に扱われるでしょう。私だって、人並みにオンナとして愛されたいわ。でも、プライドを捨てて人並み以上に尽くさないと得られないものなのよ」
真砂子は、心の中で“それは違う”と叫んでいた。
「何年も男日照りだし、モテないし、恋愛下手だし、そのくせプライドだけは高すぎるし。龍星と男女関係にある早苗おかあさんが、むしろ羨ましいわよ」
と、思っていたのだ。
「会社辞めたら、龍星に逢えなくなるわよ」
真砂子はビシッと話題をビジネスライクに戻した。
「仕事中に龍星を見てると、色んなことが思い出されて、仕事に集中できなくなっちゃうの」
「うつつを抜かしているのね。でも複雑な想いを抱えているのは早苗おかあさんだけじゃないのよ。皆同じように、色んなこと抱えながら仕事しているの。今、就職難でしょ。年齢の問題もあるし、ココ辞めてもアテがあるかしら?」
沙耶も香奈も真砂子自身も、龍星に対する想いを抱きながら、仕事は仕事と切り替えてこなしているのだ。
「すみません。私の考えが甘かったみたいです」
「子供の学費を稼がないといけないって言ってたじゃない。あなたは“おかあさん”でもあるんだから! しっかり頑張ってよ」
「はい」
早苗おかあさんの件は、複雑な思いを抱えつつも取り合えず一件落着した。
「世間では主婦の不倫が流行ってるらしいけど、実際には、梨奈のような派手なキレイめ主婦じゃなくて、早苗おかあさんみたいなタイプが結構やるものなのね」
真砂子は今だ驚きを隠せず、今回“取材”した内容をこのように分析したのだった。

「しかし、龍星・・・あなたは何て酷い・・罪なオトコなのかしら・・」
真砂子は、社内の女性たちのココロを引っ掻き回す龍星に、恨みに似た感情すら持った。

ある日、真砂子はクライアントから香奈の仕事ぶりを褒める話を聞いた。真砂子は嬉しくなり、香奈と二人っきりになった時にこの話を伝えた。
「ふふふ・・、最近、プライベートが充実しているからかしら。毎日が楽しいと、仕事にもイイ影響が出るのかも~」
「へぇ~! 何かイイコトあったの?」
「うん! 龍星と時々会ってるのよ。あ・・と言っても、恋人とかじゃないから。友人としてね、今イイ感じなの。龍星のバンドにね、私、キーボードして加わったのよ。小さい頃からピアノをやってきたからね。バンド仲間に重宝されてるのよ。龍星とは一緒に話していて楽しいし、ホントに気が合うわ! 音楽や映画の話とか一致するし。沙耶なんかより私の方がずっと気が合うのよ。だから、龍星、私とよく会うようになったのよ」
「つかぬことかもしれないけど、やっぱり、龍星のことが今でも好きなのね・・」
「ええ、好きよ! 好きだからなるべく一緒に居たい。その為には、友人のままで男女の関係にならない方がいい・・という結論に達したの。万年片思いだけど、龍星の傍にいられたら・・私は幸せなの」
真砂子は香奈のことがいじらしく思えた。
「人を好きになるエネルギーを、イイ方向に向けてると思うわ。それは素敵よ。これからも頑張ってネ」
「ありがとうございます、編集長。私、悩んで悩んで・・自分でもすっごく嫌な気持ちになって・・でも、これじゃーいけないって思って、やっと突破できたみたい。私、もっと頑張りまっす!」
香奈は才能もあるし、人間としても大きく成長できそうだと、真砂子は応援したい気持ちになった。

一方、仕事で輝かしい香奈に対して、ここのところ冴えないのが沙耶であった。沙耶は仕事でミスを連発していた。たまりかねた真砂子は沙耶を別室へ呼んだ。
「ミスばかりして、すみません・・」
元来気の強い沙耶らしからぬ、気落ちした態度だった。
「あ、あの・・何かあったのかしら? 私で良ければ相談にのるけど・・」
真砂子は恐る恐る切り出してみた。早苗おかあさんのことや香奈のことを既に知っており、龍星の本命の彼女としてけして安泰ではない状態も理解出来ており、そのことが仕事にも影響が出ているのかと、真砂子は思っていた。
「わーーーーん・・」
突然、沙耶は泣き出した。そして、少し落ち着くと、ゆっくりと話し始めたのだ。
「龍星に別の女が居たの・・もう、ショックで何もかも手がつかなくなって・・・」
「あ、あの・・女って・・その・・」
真砂子が言いにくそうにしていると
「香奈や早苗おかあさんのことは知ってるわよ。それだけでもショックだったのに・・。でも、それは“遊び”だから未だいいのよ。さらに別の女が居たのよ! その女、自分が本命の彼女ぶっちゃってサ! もう、許せないわ!」
怒りに震えている沙耶を、真砂子は必死になだめていた。真砂子は
「私、いったい何やってんだろ・・」
自分の立場に疑問を持ち始めた。仕事以外のことに奔走していることが多いのだ。しかも“龍星絡み”の後始末ばかりだ。

「大奥総取締役」

その言葉が浮かんできた。大奥総取締役は“殿”から情をかけてもらうことはないが、秩序を保つ為に、調整役にまわるのだ。
「私、龍星のことを誰よりも一生懸命愛してるし、すごく尽くしてるのに・・、何で、私から離れようとするのかしら・・。くーー! あの女が悪いのよ~」
沙耶は相変わらず自分の主義主張をし、怒りが納まらないようだった。

<第4話へつづく>


登場人物 紹介---------------

★龍星(29歳・制作)・・・女ばかりの会社に入社したイケメン。モテ男。

★真砂子(34歳・編集長)・・・美人で仕事がデキるが恋は不得手。龍星に密かにときめいている。

★沙耶(32歳・制作)・・・制作のリーダー格で気が強い。龍星と付き合っている。龍星の前では“女の子”。

★梨奈(31歳・編集)・・・ミセスだが、龍星と友人として付き合っていると公言。派手なタイプ。夫の転勤で退職した。

★香奈(24歳・制作)・・・センスの良さが注目されている若手のホープ。一時期、龍星とメールで繋がっていた。龍星のことが好きで、追い回したり追跡したりしている。だんだん沙耶とも険悪になる。

★美夏(25歳・編集)・・・ちょっと天然な憎めない女の子。皆の前で龍星に告り玉砕する。

★早苗おかあさん(42歳・パート)・・・社内の癒し的存在。思春期の子供を持つ主婦。料理が得意。龍星と意外な関係が発覚する。

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【短期連載小説】 大奥★社内恋愛 2
女ばかりの会社の
殿(イケメン)をめぐって、大奥(社内)は複雑に混戦模様。
しかし、ポジションも決まりつつある?
へビィな展開へ

※登場人物も増えて複雑化してきたので、ストーリーの終わりの一番下に、登場人物紹介コーナーを設けました。

大奥★社内恋愛 2

※このストーリーはフィクションです


真砂子は龍星を追いかけ、息を切らしながら問いかけた。
「宴会芸の内容はどうなったのかしら? 途中まで一緒に詰めていたんだから、最後までキチンと報告してほしかったなぁ」
感情に走ろうとする気持ちを押さえ、やんわりと話したつもりだった。
「そのことなら、ご心配なく! もう決まってるから!」
後ろから、気の強そうな女性の声がした。声の主は沙耶だった。沙耶は制作のリーダー格で、しっかりしており真砂子も安心して仕事を任せていた。ただ、気の強すぎるところが玉にキズで、真砂子自身もヘキヘキすることがあった。この企画に関して、真砂子は
「何故、沙耶がしゃしゃり出てくるの? 私は龍星に聞きたいのに・・」
と、思っていた。しかし、龍星に話す隙を与えず、沙耶はさらに言った。
「宴会芸はね、龍星が“バカ殿”をやることになったの。あ、衣裳とか全て私たちが用意するから大丈夫よ。そして、私と香奈がお姫様の役をやって“バカ殿”をサポートして、さらに早苗おかあさんに、ちょっとズッコケお姫様をやって笑いを取ってもらうわ。ね、盛り上がりそうでしょ! 忙しい合間をぬって練習もしてるのよ。龍星、サイコーよ! こんなに格好いいのに、お笑いのセンスもあるんだもの」
「まあ、そこまで進んでいたのね。あの・・、私に何か出来ることはないかしら? バカ役でも何でもするわよ」
「お気持ちだけありがとう。でもご心配なく。編集長は忙しいし何もしないでどっしり構えてて! ま、後は私たちに任せて!」
結局、龍星とは一言もしゃべらず、真砂子に軽く笑顔で会釈して、沙耶と一緒にデスクへ戻っていった。

真砂子は、一人ノケモノにされたみたいで面白くなかった。
「企画が決まっているなら、龍星、メールで一言教えてくれてもいいのに。メールが突然来なくなったことと、沙耶が何か関係あるのかしら?」
真砂子はますます迷宮入りしていた。龍星も香奈も早苗おかあさんも沙耶と同じ制作担当で、横の繋がりで沙耶が仕切っているのだろう。沙耶は真砂子より2つ年下だが、龍星よりは“お姉さん”にあたる。香奈は20代前半だが、センスにはキラリと光るものを持っており制作のホープだ。早苗おかあさんは文字通り、高校生と中学生の子供を持つおかあさんで、パート勤務で主に制作の雑務をこなしている。40代前半で見た目もポッチャリしていていかにもおかあさんなので、皆からそう呼ばれていたのだ。


そうこうしているうちに送別会&歓迎会の日がやってきた。嫌われ者の部長は欠席ということになり、皆は嬉々として沸いていた。社内の女性たちは服もメイクもバッチリで、いつもの飲み会と全然違い、気合いがみなぎっていた。
「まるで、合コンみたいな・・」
真砂子は思ったが、そういう真砂子とて、いつもよりフェミニンにしていた。

宴会芸は大いに盛り上がった。イケメンの龍星がバカを演るギャップが楽しく、ある意味龍星の株がますます上がったのだ。早苗おかあさんのズッコケぶりも可笑しく、龍星の“バカ殿”とナイスなコンビだった。沙耶は、龍星の変装メイクから支度から甲斐甲斐しく世話を焼いていた。その姿が妙に幸せそうで、真砂子は見ていられなかった。香奈や早苗おかあさんも、沙耶にくっつき取り巻いていた。真砂子は、仕事はデキても男と女のことには全く鈍感だ。先ほどの沙耶たちのポジションこそ、未来を暗示するものだと、真砂子は気づかないでいた。

龍星が変装から着替えて戻ってくると、さっそく社内の女性たちがワンサカ群がってきた。その中心には、今度退職する梨奈が居た。だが、沙耶たちは、群れには加わらず隅っこで飲んでいた。社内の数少ない男性の既婚の二人は、輪から外れてふて腐れていた。真砂子は、その二人にお酒を勧めに行った。

一次会がお開きになり、二次会は夜景が美しい落ち着いたスカイバーで行うことになっていた。カラオケが嫌いな梨奈に配慮したのだった。龍星の横の席取りの争奪戦が密かに繰り広げられていたようだった。見事、席をゲットしたのは美夏だった。龍星と女性たちはゲームに興じ、盛り上がりを見せていた。真砂子は隅っこの席で、龍星の輪から遠い女性たちと静かに語りあっていた。

「あのー、編集長、今ちょっといいですか?」
声をかけてきたのは香奈だった。皆が盛り上がってる時に何だろう?と思った真砂子は、バーのカウンター席に二人して移動した。
「編集長には耳に入れておいた方がいいと思ったんだけど、実はですねぇ・・・龍星と沙耶、付き合っているんです」
真砂子はショックで手が震え、カクテルを落としそうになった。沙耶が甲斐甲斐しく龍星の世話をしているシーンなどが脳裏に浮かんでいた。しかし、真砂子は冷静さを装った。
「そ、そうなの・・。社内の皆は知ってるのかしら?」
「多分、知らないと思う。あの二人、すごく隠そうとしてるからね。社内であの二人、妙によそよそしく会話するじゃない。 あれがね・・すっごいワザとらしいんだよね~。わたしね、龍星のアパートの近くに住んでいるんだ~。で、龍星のアパートの駐車場にね、しょっちゅう沙耶の車が停まっているんだよ。週末なんて必ず!だよ。この間なんか、二人で手を繋いで歩いていたよ。二人ともサングラスかけてたけど、バレバレだっちゅーの! 沙耶、会社には絶対着てこないようなめっちゃ可愛い、いかにも女の子~って格好してたね~」
香奈はアルコールの勢いも手伝って饒舌になっていた。真砂子は、ようやく事実を受け入れつつあった。突然メールが来なくなった理由も、やっと納得しかけたが、さらに香奈はしゃべり続けた。
「私さぁ~、実は龍星とメールのやり取りしていたんだよね。仕事の相談とか、あと、龍星と結構音楽の趣味が合うんで、ま、そんな他愛のないことね。なのにさっ! ある日、突然メールが来なくなったんだよ。龍星に聞いてもはぐらかされるし。も~!絶対沙耶の仕業だよ! アイツ、龍星の携帯、チェックしてたんだよ。気が強くて嫉妬深いからさ、自分以外のオンナとメールのやり取りをさせないように見張っているんだよ。ヤだね~! 龍星は人気者だし、皆のものなんだから、友だち付き合いくらいは許せ~っつ~の!」
香奈はかなり感情的になってヒドイ口調になっているが、真砂子は、龍星が香奈ともメールのやり取りをしていたことにショックを受けていた。一方で、香奈も真砂子と同じ時期に同じ想いをしたことに、少しだけ親近感を持った。しかし、真砂子は、一時でも龍星にときめいた気持ちを持ったことを香奈には悟られないように、編集長の顔で諭した。
「教えてくれてありがとう。このことは内密にしておきます。ウチはけして社内恋愛反対というわけではないけど、相手が龍星なだけに社内の女性たちのショックも大きく、仕事にも差し障りが来ると思うの。あなたも口外しないように、お願いね」
香奈は素直に納得してくれた。しかし、真砂子は思っていた。
「何故、香奈はあんなにムキになっているんだろう。香奈のしている行為は殆どストーカーじゃない。追跡すればするほど傷に塩をすり込むようなものなのに。・・・香奈も龍星のことが好きなんだろうか?」

真砂子は元の大テーブル席に戻ると、龍星と女性たちの輪から大声が聞こえてきた。
「あのー! あたし~、龍星のことが好きです!!」
それは、美夏の声だった。美夏は酔った勢いも手伝って、皆の前で堂々と“告白”をしてしまったのだ。周りの女性たちは固まっていた。真砂子は焦り、冷や汗をかいていた。
「マ、マズイ・・この空気・・・変えなきゃ・・・・」
すると、とっさに龍星は答えた。
「ごめんなさい。俺はこの会社に入ったばかりだし、今は仕事が第一、仕事が恋人なんだよ。そして、この会社を愛しているんだよ。だから、個人的な想いには答えられない。申し訳ない。でも、俺のこと、そんな風に慕ってくれるのはとっても嬉しいよ。これからも皆で力を合わせて、いいもの作っていこいうよ!」
女性たちから拍手が沸き起こった。
「カッコイイ~」
と、黄色い声も飛んだ。龍星の言葉に、再び真砂子はホロリとなってしまったのだ。肝心な美夏の方も大人しくなり、これ以降は一言もしゃべらなかった。お開きの後、帰り道を歩きながら、泣きじゃくる美夏を真砂子は慰めていた。龍星と沙耶が付き合ってることなど知る由もないだろう。しかし、本当に泣きたいのは真砂子のほうだった。その夜は眠れなかった。


怒涛の送別会&歓迎会から数週間経って、ようやく社内もいつもの落ち着きを取り戻していたかのようだった。そんな中、早苗おかあさんから電話かあり、インフルエンザで1週間ほど休みたいとの申し出だった。真砂子は快く応じた。

真砂子は沙耶と打ち合わせをする為、制作の方のデスクへ行った。すると、何だか今までにない重々しい空気を感じたのだった。よく観察してみると、沙耶と香奈が全く口を聞いていないのだ。しかも険悪なムードすら漂っていた。やはり、龍星のことが尾を引いているのだと、真砂子は感じていた。

ある夜遅く、真砂子と美夏と編集の数人で残業の後、一緒に食事に出かけた。すると、その一人が
「ねえねえ知ってる? 龍星と沙耶って付き合っているんだってね」
真砂子はマズイ・・と冷や汗が出たが、別の一人が
「ああ~、私も実は知ってたのよ。誰にも言わないで~って言われたから黙っていたけど。でも、皆知ってるんじゃない? 本人たちは隠してるつもりでも、社内恋愛ってさ、結構バレてるもんなんだよね」
真砂子もとうの前に知っていたけど、周りの人は意外と冷静に受け止めていたので驚いていた。だが、真砂子はシラを切り通した。
「ええーっ、そうなの?」
と、ワザとらしく答えると、美夏が言った。
「あたしー、龍星に告って玉砕して、自分の想いを成仏させました! ・・で、今、新しい彼氏居ます! えへへっ」
真砂子は、美夏のパワフルさが羨ましくなった。それに比べて、真砂子は今だ龍星への想いをひきずっているし、気持ちがスッキリしていないのだ。それ以降、食事会は沙耶の話題で深夜まで盛り上がった。だが、殆ど悪口に近いものになり後味が悪くなった。沙耶は、女同士の前と龍星の前とでは全然態度が変わるとか、普段、気が強く口が悪いクセに、龍星の前だけコロッとしおらしくなり、ぶりっ子な口調になるとか・・そんな内容だった。

数日後、早苗おかあさんが久々に出勤してきた。
「わあ~! 早苗おかあさんの手作りケーキだ! 超うれしい! これを待っていたのよ~」
「早苗おかあさんが居るとやっぱり癒される~!」
早苗おかあさんの存在で、ここのところのギスギスしていた社内の空気が一気に和らいだのだ。
「編集長、1週間の約束だったのに、2週間も休んだりしてすみませんでした」
「いいのよ。病気はしっかり養生したほうがいいわ。長く休んでよく分かったわ。早苗おかあさんの存在の大きさによ! これからも、長くこの会社に居てほしいわ」
「編集長、そのことなんだけど。ちょっといいですか・・・」
真砂子と早苗おかあさんは、隣の会議室へ移動した。真砂子は嫌な予感がしていた。
「・・・えっ、辞めたい? どうして?」
「・・・実は、龍星の子、妊娠してしまったんです」
「・・・な、な!」

<第3話へ、つづく>


登場人物 紹介---------------

★龍星(29歳・制作)・・・女ばかりの会社に入社したイケメン。モテ男。

★真砂子(34歳・編集長)・・・美人で仕事がデキるが恋は不得手。龍星に密かにときめいている。

★沙耶(32歳・制作)・・・制作のリーダー格で気が強い。龍星と付き合っている。龍星の前では“女の子”。

★梨奈(31歳・編集)・・・ミセスだが、龍星と友人として付き合っていると公言。派手なタイプ。夫の転勤で退職した。

★香奈(24歳・制作)・・・センスの良さが注目されている若手のホープ。一時期、龍星とメールで繋がっていた。龍星のことが好きで、追い回したり追跡したりしている。だんだん沙耶とも険悪になる。

★美夏(25歳・編集)・・・ちょっと天然な憎めない女の子。皆の前で龍星に告り玉砕する。

★早苗おかあさん(42歳・パート)・・・社内の癒し的存在。思春期の子供を持つ主婦。料理が得意。龍星と意外な関係が発覚する。

テーマ:誰かに伝えたくなる、話。(*´ー`) - ジャンル:小説・文学

【短期連載小説】 大奥★社内恋愛 1
もしも、女ばかりの会社に、目の覚めるようなイケメンが入社して来たら・・・
さあ、大変です!!


大奥★社内恋愛 1

※このストーリーはフィクションです



真砂子の職場は女ばかりである。真砂子は今年で34歳になるが、彼氏もここ数年ほど居ない。
「こんな女ばかりの職場で出会いなんて、なかなか・・」
他の女性たちも同じ考えであった。顔を合わせれば、こんな話題ばかり。何となく冴えない空気が流れる。

真砂子の職場はタウン情報誌の編集と制作を担っており、真砂子はその“編集長”を務めていた。だが、編集長といっても実質名ばかりで、雑用係と自嘲していた。女ばかりの職場と言ったが、実際には3人ほどの男性が居る。1人は真砂子の上司でもある部長、他には編集に2名。だが、全員“既婚”であり“論外”であった。

部長は40代後半で社内の嫌われ者であった。変な話、部長が嫌われ者の悪役であることで、以下社員全員が団結し纏まるという現象が起きていたのだった。

女ばかりの職場のメリットと言えば、セクハラが無いことである。下ネタ1つ話しづらい雰囲気があった。それから、仕事内容に男女差はない。こういう環境下では、女性はどんどん強くなっていく。皆、朝から夜まで忙しく働き、ヒマでない為か、女ばかりであっても意外と人間関係で揉めることは無かった。
「つまらないことで揉めるのは、絶対ヒマだからよ」
と、真砂子も常日頃から思っていた。だが、仕事のデキる“強い女”集団には、悲しからずや男性たちは遠のいてゆく傾向だ。結果、“男の居ない人”ばかりだし、変な話、このことでも女同士でいい意味で纏まっていたのだ。

「あ~あ、何かこう~! 目の覚めるようなイケメンが入社して来ないかなぁ~!」
入社2ヶ月目の編集の美夏が嘆くと、他の女性は全員首を横に振った。
「あっ、あたしが入社した時も、『チッ、また女かよ』って、全員の視線がブーイング~って感じだったもんね~」
やや天然っぽい美夏が言うと憎めず、笑いを誘った。

しかし、イケメンが入社するという、夢のような妄想のような話が数日後に現実に起こったのだから、もう社内は大変な事態になってしまうのだ。


そのイケメンの名前は龍星といい、29歳、もちろん独身であった。制作に配属になった。龍星は背も高く、服もヘアスタイルもオシャレで、独り暮らしで、趣味は音楽でバンドを結成しギターとボーカルを担当しているとのことだった。性格もはっちゃけていてノリが良い。これだけモテる要素を持ってる男性はそうそう居ないだろう。だが、社内の女性陣の反応はいうと・・・、今まで仕事中毒で“男免疫”が出来てないせいか、龍星に対してややよそよそしいムードだった。特に誰かが積極的にアタックを仕掛ける風でもなく
「あれだけイイ男だもん。ゼッタイ彼女居るよね~」
と、むしろ諦めムードだった。

そんな中、編集の梨奈がプライベートで龍星と一緒に音楽ライブに行ったと話題になった。だが、梨奈は女性社員の中で唯一ミセスだったので、恋人になったというのでなく単なる友人付き合いの延長だろうと思われた。梨奈は、普段から行動が派手めで目立ちたがり屋で“手の早い”性格だった。
「龍星は、私の数ある男友だちの中でも最高よ。すっごい気が合うのよ、私たち」
梨奈は、龍星と出かけたことも自分から言いふらしたようだった。

このことが、社内の女性たちに火を付けたようだった。なるべく龍星と話をする機会を持とうと、女性たちは必死になっていた。編集長として皆を纏める立場に居る真砂子も、嫌な予感を持った。
「今まで何となく保っていた社内の均衡が、ガタガタと崩れ始めるわ・・」

だが、コトの発端の梨奈が退職することになった。理由は梨奈の夫の転勤の為だった。何となく社内に安堵の空気が流れた。だが、梨奈は爆弾発言を投下した。
「龍星ね、今、フリーなんだって! 彼女と別れたばっかりよ~ん」
そのことで、女性たちはますますざわめき始めた。真砂子は不安になったが、そうもしていられなかった。梨奈の送別会と龍星の歓迎会を同時に行うことを、社内メールで社員全員に送った。すると、案の定、女性たちは
「決戦は今度の飲み会!」「何、着て行こうかしら~」「美容院にも行かなきゃ~」
と、そわそわし、真砂子はため息をついていた。

「良かったら、何か宴会芸をしませんか? ただ普通に飲み会するだけじゃー面白くないでしょう。俺、盛り上げるの大好きなんっすよ! どうせやるなら楽しく行きましょうよ! ネッ」
ハッと真砂子が振り返ると、龍星が真砂子に直接話しかけて来たのだった。
「うっ・・やっぱりイイ男よね。女性たちがざわつくのも仕方ないわ~」
真砂子はポーっとなって、カラダの力が抜けそうになったが、すぐに冷静に編集長の顔になった。
「そうね。いいアイデアね。せっかくだから何かしましょうか。内容は・・あなたに全て任せるわ!」
「ホントですか! 何か思いついたらメールしますよ。あのー、携帯のメルアド教えてくれませんか?」
「ええーっ、携帯の方の?」
「ダメっすか? 編集長忙しいし、携帯の方がいいかと思って・・・」
真砂子はビックリしたが、お互いの携帯メールアドレスを登録し合ったのだった。

それから、時々、真砂子の携帯に龍星からのメールが来るようになった。メールは夜、帰宅しているであろう時間帯に来ることが多かった。真砂子は仕事が終わった時、充実感と同時に孤独感にも襲われることがあった。そんな時に来る龍星のメールについトキメキを覚えてしまう。内容は飲み会のことと、業務内容のことだが、文章の合間にプライベート的な質問を織り込むこともあった。
「龍星は、何故私とメールのやりとりをするのかしら? ひょっとして、ちょっとだけ私に気があるの?」
そう考えると真砂子はカラダが熱くなった。そうしてるうちに龍星からメールが来た。
「真砂子さんは、美人で仕事がデキていかにもキャリアウーマンって感じだけど、ちょっと取っつきにくい雰囲気がありました。でも思ってたよりも気さくで話やすくて、癒されます♪」
ドキュン!! 真砂子はハートに矢を射抜かれてしまった。自分も龍星に気があるとの返信をしょうとしたが、考えたあげく無難な返信にしてしまった。
「龍星よりも5つも年上だし、モテモテの龍星がこんな私なんかマジに相手にするわけないわよね・・」
本当は、編集長としての立場でものを考えないといけないのに、真砂子はつい“一人の女”になって考えを巡らせていた。
「社内の女性たちが皆、虎視眈々と龍星を狙っている中、私一人が独占してしまったら、女性たちの嫉妬もスゴイだろうなぁ・・」
単にメールのやりとりをしてるだけなのに、まるで龍星と恋人同士な気分にまで一人で妄想で盛り上がってしまうのだった。

その夜、真砂子はシャワーを浴びて寛いでいた。
「そろそろ龍星からメールが来るかしら?」
だが、いつまで待っても一向に来ないので、真砂子は自分から話題を作ってメールを送った。だが、それでもメールが来ることは無かった。何度も自分から送るのは変だし、真砂子はヘンなところでプライドが高いのだ。

次の日、龍星に話しかけてみるが、龍星は冷ややかな顔でそっけなかった。
「どうして、どうして! 一体何があったの? この間まですごくフレンドリーだったのに!」
真砂子は心が寒々としていくのを覚え、堪えきれずトイレに篭って一人で泣いた。無敵のキャリアウーマンのように思われ、仕事のトラブルも泣き事言わずに難なくこなす真砂子だが、恋に関しては、“まるで中学生みたいだな”と思ったのだった。

そして、その夜も、次の夜も、また次の夜も・・・メールが来ることはなかった。真砂子は、これだけのことで傷つき心の痛みを覚えたが、社内の女性たちに悟られぬよう気丈に仕事をこなした。だが、何故、突然メールが来なくなったのか!・・その理由が知りたくて堪らない思いをしていた。自動販売機へドリンクを買いに行こうとする龍星を、真砂子はついに追いかけていた。

<第2話へ つづく>

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学





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